サエボーグさんの新作発表

大ゴム祭は3部構成です。その第1部が、現代アーティスト・サエボーグさんの新作発表でした。

サエボーグさんの新作「豚小屋」
現代音楽家のCarl Stone氏(左) (撮影=Kazuho氏)

ステージ上に横たわるのは、ラテックス製の巨大な豚。サエボーグさんの新作「豚小屋」では、現代音楽家のCarl Stone氏の音楽に合わせて、生と死の交錯するストーリーが演出されました。

次々と生まれてくる子豚たち。彼らは、押し合いへし合いしながら、母豚の乳を飲もうとします。

ステージが暗くなって、農夫(ピコピコさん。『ST 赤と白の捜査ファイル』に登場するガッキー君の生みの親としても有名な怪獣芸術家)が登場します。

農夫は、母豚にくっついている子豚たちを引き離していきます。

子豚たちは、農夫に追い立てられて、ステージからどんどん消えていきました。この後、子豚たちは一体どうなるのでしょうか?

全ての子豚がいなくなると、農夫は母豚を眺めます。彼の悲しそうな表情が印象的でした。

現代アーティスト・サエボーグさん独占インタビュー

サエボーグさんは、ラテックス製の着ぐるみを自作し、自ら装着するパフォーマンスを展開するアーティストです。「第17回岡本太郎現代芸術賞展」(川崎市岡本太郎美術館、神奈川、2014)で岡本敏子賞を受賞するなど、現代アートの第一線で大活躍しています。

サエボーグさんに、大ゴム祭で発表された新作「豚小屋」についてお聞きしました。

――新作「豚小屋」のコンセプトを教えてください。

新作の「豚小屋」は過去作の家畜シリーズ「Slaughterhouse-9」の世界をよりクローズアップしたものです。「Slaughterhouse」のシリーズはパレスチナ出身のアーティスト、モナ・ハトゥムやBBCのテレタビーズを下敷きにしています。モナ・ハトゥムは工業製品のキッチンや冷たい感じの家などを作っており、女性の役割だった再生産労働を工場の中にたとえています。テレタビーズは「完璧に管理された幼児の世界」というイギリス的シニカルです。

私の「Slaughterhouse」に出てくる家畜たちも生まれた時から役割が決まっていて、管理、搾取される運命という現実のカリカチュアです。「豚小屋」も同じく、生まれてから死に向かっていくという役割が決まってます。幸せな誕生のイメージはなく、死ぬために生まれてきたのです。

サエボーグさんの新作「豚小屋」 (撮影=都築響一氏)

――さまざまな模様や色の子豚たちが印象的でした。子豚たちの造形には、どういう意味が込められているのでしょうか?

今回は個体差(個人差)をより強調しました。皆、生まれてくる豚は普通の色だと思っています。けれども、ブチも黒もいるんだということです。

私は『X-men』のコンセプトが好きです。あれは、スーパーパワーをもっているのは障害だということです。『X-men』はキング牧師暗殺事件から影響を受けていて、アメリカの人種差別をテーマにしています。

――サエボーグさんの作品も、人種差別をテーマにしているのですか?

『X-men』のコンセプトが好きだからといって、私の作品が、直接的に人種差別をテーマにしているわけではありません。私が作品を通して伝えたいのは、「人(主流派)と違うというだけで生きるのが困難だ」という問題です。

ウルトラ怪獣でガヴァドンが好きなのも同じ理由からです。ガヴァドンは何も悪いことをしていないのに、大きくてイビキが煩くてとても邪魔、いるだけで迷惑な存在、そのために排除されます。ガヴァドンと同じことは、私たちの生きる社会でも起こっています。

ところで、アメコミに出てくる敵役は「ヴィラン」とよばれます。ヴィランは悪ではなく、信じるものが違う人のことです。DevilとDemonの意味が違うのと同じ。ヴィランやDemonは悪じゃない、違うだけなんです。

フォトギャラリー【写真75枚】これがゴムの世界…!「美麗ラバリスト」たちの写真をもっと見る
  • Mary Jaleさん(Kurage)
  • すちうるさん(ラバリストウォーク)
  • 若林美保さん(Kurage)
  • るみらばさんるみらばさん
  • Kurage
「ヤバチケ」更新情報が受け取れます