僕、レコーディングが大好きなんですよ
——ギター自体のチューニングを変えて、ライヴ中に曲ごとにギターを持ち変えるというのはよくあることですよね。
桜村:そう、個人的にはいちいち持ち変えることって美しくないのではないかと思うし、そもそもギター自体のチューニングを変えるって、健全ではない気がしていて。
例えば大体のギターって3フレット目にポジションマークがついているじゃないですか。通常のチューニングで3フレット目の1弦を鳴らすとGの音が鳴る。でもギター自体のチューニングをしょっちゅう変えると、その基準がなくなってしまう。ギター教育上それはよくないなって思うんですよ。
実音で絶対的な基準がないとタブ譜しか読めない、五線譜が読めないギタリストばかりになってしまう。それではより良い“ものづくり”はできないと思ったんです。
——そこに危機感を覚えたというのは面白いですね。ただ単に良い響きを追求するのではなく、意匠があるのが桜村さんらしいと思います。発売されてからかなり反響があったとのことですが、「桜村さんに憧れてギターをはじめました!」という人も多かったのではないでしょうか?
桜村:そうですね。嬉しいんですけど、責任を感じちゃいますね(笑)。俺よりカッコよくギターを弾く人なんて沢山いるから、そんな憧れてもらうなんてとてもとても……(笑)。
——流石、ギタリストらしくないご反応ですね(笑)。では、表現者として、何をしている時に一番喜びを感じますか?
桜村:自己満足的な発想になってしまうんですけど、良いものができて、それを聴いている時ですかね。
僕、レコーディングが大好きなんですよ。ミュージシャンって、ライヴのほうが好きな人が多いんですけど。ずーっと日の当たらないようなところに籠ってイライラしながら作業して、やっとできた時にお酒が飲める、飽きるまでループして聴く、っていうのがすごく好きで(笑)。
バンドをはじめて、初めてデモテープやCDができた時の嬉しさ。僕はあの感覚をまだ持ち続けているんだと思います。あの感覚に向かって、様々なものをひたすら作り続けているんです。
——今後のご活動のなかで、より力を入れていこうと思われてるものなどありますか?
桜村:やっぱりいろいろ経験したいし、やってはみたいんですが、今は仕事を絞ってひとつひとつのプロジェクトで消費するカロリーを上げるというか、取捨選択をするというか、そういう作業が必要な時期かなと思っています。
ちょっと前まではエンジニアとして腕を磨きたいなと思っていたんですが、今は作品作りをすることのほうが求められているので、ギタリストとしての活動や作品作りが増えていきそうです。
とりあえずは和楽器バンドですね、あとはm:a.ture……。m:a.tureは僕のライフワークなんですよ。自分の身になにが起ころうが、メンバーが変わろうが一緒続けていくと思います。