「アイドル×スポ根」を掲げ、小学館の新青年コミック誌『ヒバナ』で掲載されている人気マンガ『ドルメンX』。
「イケメンって物理じゃなくて概念だから。」という名言が生まれ、読者からも「アイドルを哲学する漫画」という評価が飛び出すなど、新感覚アイドル漫画として注目を集めている本作の秘密に迫るため、作者・高木ユーナへのインタビューを実施!
アイドルやイケメン俳優など、イケメンコンテンツを中心としたショービジネスを斬新な切り口で描いている『ドルメンX』の舞台裏で繰り広げられた綿密な取材から、編集部とのやり取りまで、『ドルメンX』の制作秘話を聴かせていただきました。
――『ドルメンX』を描こうと思ったきっかけを教えてください。作中に出てくるようなイケメンコンテンツに以前から興味があったのでしょうか?
高木:それが、私自身がもともと主人公のヨイちゃんみたいに追っかけ気質だった訳ではないんですよ。好きになったのは、「週刊少年ジャンプ」に持ち込みをしていたときに、“テニミュ”(ミュージカル『テニスの王子様』)を観に行ったことがきっかけです。
作品を知るって意味も込めて毎公演一度づつは観に行くようにしていたのですが、俳優さんがどんどん成長してくのが目に見えるのが楽しくて、いつの間にかハマっていました。
ある時、友人が「こういう現場にいる人は、舞台の上の人も、ファンも、全員本気なんだ!」と言ったことがあって。それがすごくしっくりきたんですよね。たしかに、こんなにも全員が本気の場所って現代の日本にそうそうあるかなって思いました。
私は学生の頃、野球観戦が趣味だったのですが、バッターボックス裏と外野席の熱量はそれぞれ違うんです。酒盛りをメインにしている人たちもいて(笑)。「ボール見てないじゃん!」みたいな人達も、それはそれで私は大好きなんですが(笑)。でも『ドルメンX』に描いているような現場って、誰もが舞台というボールから目をそらさない。それってすごいことだと思いました。
今日初めて来たような子でも、暗闇からじっと目をそらさずに明るい ステージを見続ける。客席が真っ暗になったときのなんとなく野生に帰るような感じも面白いし、全員が本気だし、空間に惚れてしまったのがきっかけですかね。最近はジャニーズや他のショービジネスにも興味を持って観に行くこともあります。
――『ドルメンX』では2.5次元の舞台に出演される俳優さんや、いわゆるイケメン舞台俳優もアイドルと同じように扱っていますよね。なかなかできない切り口だと思います。
高木:そうですね。自ら否定される俳優さんも多いですし。私も最初は、「そうだよね!違うよね!」って思っていたんですが、「いや、俺はアイドルだよ!」っていう俳優さんもいて、その違いがわからないなって感じて、逆に「アイドルって何だ?」「アイドルを知りたい!」ってすごく思いました。
本編でも主人公の隊長が「俺はアイドルがわからない」っていうのですが、私もわからないからこそ、そこを議題にしたいと思っていて。明確な答えがない問いだとはと思うんですが、だからこそ考えたいです。
――高木さんは以前Twitterで「『ドルメンX』は哲学だ」といった読者の感想をリツイートされていましたが、今のお話を伺ってまさしく哲学だなと思いました(笑)。
高木:あれ、私も面白い感想だと思ってリツイートしたんですよね。自分では哲学なのかはわからないけど、面白い表現だなあって。でもアイドルやアイドルを取り巻く人たちについて、自分なりに「こうかなあ?」っていう表現を模索はしてるけど、「それは違う!」って言われたら「なるほど…!」って思っちゃうし、あくまで知りたいから考えているだけで、「アイドル」って存在の定義をしようとしているわけではないです。
「ドルメンX」はアイドルを哲学する漫画だよ…!アイドルがどういう姿勢でアイドルをやっているのかアイドルになるにはどうすればいいのかそもそもアイドルってなんなのか…ファン、事務所、アイドル、アイドルとは関係なく生きてきた人間…それぞれの目線からアイドルについてむき出しにしていく漫画
— 車庫 (@485_485) 2016年6月2日
―――なるほど。でも純粋なファン目線というよりかは、現役人気タレント目線もあったり、辞めていく人の目線もあったりと、『ドルメンX』はアイドル中心にショービスを俯瞰で見ている感じがありますよね。
高木:私はアイドルや俳優さんに対して「天上人」って感覚よりは「この人達にも親がいて、小さい頃があったんだよな……。同じ人間なんだよな」って感覚を抱くんですよね。彼らが同じ人間だと思えないほど輝いているからこそのことだとは思うんですが(笑)。
別にステージに立つ仕事をやりたいと思っていたわけではないんですけど、こういうジャンルにハマってみて、最初に「すごい!カッコいい!」よりも「歳が近いのに、この人たちはこんなにキラキラしてて悔しい!」って思ったんです。そういう感覚があったから、作る側の人たちや、人気アイドルを取り巻く人達に目が行きやすかったのかもしれません。