日本の子どもの読解力が落ちているそうです。
先日、 OECDが発表した世界79か国の子どもの学習到達度調査( PISA)の結果によると、日本の15歳の読解力は15位。 8位だった前回(2015年)から大きく後退しました。
子どもの文字離れは著しく、本はおろかマンガも読めない子も出てきているとか。
ここでいう読解力とは、高尚な文学作品を味わえる能力のことではなく、文章の意味内容を正しく理解する力のことを言います。
読解力がないとはどういうことなのか。欠けているとどんな困ったことがあるのか、昨年、大きな話題を読んだ『AI vs. 教科書の読めない子どもたち』(新井紀子 著)などを参考に、考えてみましょう。
「わかった?」「はーい!」の落とし穴
読解力の前に、「理解する」ということを今一度、考えてみたいと思います。
子どもにいろいろ言ったあとで、「わかった?」 と聞いたとします。たいていの子どもはとりあえず「 わかった!」「はーい!」と答えるのではないでしょうか。
これが落とし穴です。子ども、特に小さな子どもにとって、「わかった」と答えるのは、「うん、聞いたよ」 程度のことなのです。
いいお返事のすぐあとに、 まったくこちらの言葉を無視したことをやらかしてくれ ると、「どうわかったの?!」と聞きたくなりますよね。
頭の回転のいい子だと、 親が言った通りに返すことができますが、これは「理解する=丸覚えする」と思っているだけかもしれません。
読解力がないとはどういうことか
次に、具体的に読解力がないとはどういうことかを見ていきましょう。
新井さんは、AIの研究を進めるうちに、 学生の基本的な読解力に疑問を持ち、 全国2万5千人の中高生を対象に調査を実施しました。
調査のためには新井さんが独自に開発したテスト(RST) を用います。たとえば、こんな問題です。
次の文を読みなさい。
幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、 大名には沿岸の警備を命じた。
この文が表す内容と以下の文が表す内容は同じか。「同じである」 「異なる」のうちから答えなさい。
1639年、ポルトガル人は追放され、 幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。
出典(『AI vs. 教科書の読めない子どもたち』(新井紀子 著/東洋経済新報社)
いかがでしょうか。沿岸警備を命じられたのは大名ですから、 答えは「異なる」ですよね。ですが、 この問題の正答率は中学生で57%にとどまったそうです。え? と思うような結果ではないでしょうか。
読解力がないと、生き残れない?
この手の問題が苦手なのは、 最近の子どもたちだけではありません。AIにとっても難しい問題なのです。
AIは暗記や計算は得意ですが、 読解力を要する問題はまだ苦手なのだそう。
最近よく、「AIの到来によって、今後なくなる仕事がある」 ということを聞くと思いますが、簡単に言うと、なくなる仕事は「 読解力を必要としない仕事」です。
「AIに代わる仕事が増えても、 人間にしかできない仕事は残るのだから、大丈夫」 と考える人もいるかもしれませんが、人間らしさのなかに読解力があると考えると、「読解力がないと、 AIのできない仕事もできない」ということになります。
ちょっとヒヤッとしますね!