藤崎結朱『Dimension sky』(『ナゾトキネ』)
謎の異次元空間「クイズン」に閉じ込められた女性主人公が、脱出の為に次々に仕掛けられた謎を解いていく……という一風変わったストーリーのショートアニメ『ナゾトキネ』。
「謎」なのは、その物語と設定のみならず、「シナリオ協力」というクレジットでお笑いコンビ「クレオパトラ」の長谷川優貴さんと元「ハロ」のぺよん潤(増井歩)さんが参加するなど、制作陣の人選もユニークで謎だらけ。
ちなみに、本作で「原作・ストーリー構成・監督」という重要なポジションを一身に担っている福士直也さんは、アニメクリエイターにして、キックボクシングの経験を持ち、プロレスの興行にも参戦経験があるという、これまた個性的な経歴の持ち主です。
兎にも角にも、"濃い"情報量の多い『ナゾトキネ』。まだまだ、謎多き作品ですが、だからこそ読めない、だからこそ“この先”を観たくなってしまう秋アニメです。
そんな『ナゾトキネ』のオープニングに使用されている楽曲が、ちょっと懐かしい曲調なテクノ系の楽曲『Dimension sky』です。
今年は、テクノ、打ち込み系のアニソンに秀逸な楽曲が多く、その勢いは秋になっても留まることを知りません。そうした中でも、この『Dimension sky』は、90年代後半~2000年代初頭ぐらいのトランシーなクラブ、ダンス系のJ-POPを思わせる旋律で、特色を打ち出すことに成功しています。
30代オーバーのアニメファンならば、一聴した瞬間に愛内里菜さんの初期曲や高山みなみさんの「TWO-MIX」を連想した方も多いことでしょう。
世界的な流行に共振したEDM調のアニソンも良い。実験的な精神に溢れたエレクトロニカ/ポストロック的なアプローチのアニソンも良い。80'sへの愛とリスペクトに満ちたテクノポップなアニソンも良い。そして、やっぱり、この曲のようにどこまでも分かりやすいメロディと高揚感が持ち味のトランシーなアニソンも良いんです!
何よりも、藤崎結朱さんの伸びやかなヴォーカルと、どこまでも上り詰めていくような扇情的な鍵盤のフレーズは、問答無用でリスナーのハートをワクワクさせてくれる根源的な魅力を有しています。
謎が謎を呼ぶ『ナゾトキネ』ですが、その主題歌は、とても明快で馴染みやすいテクノでトランスなポップソング。そのギャップが何とも堪りません。
湘南乃風『行け! タイガーマスク』(『タイガーマスクW』)
「虎だ! 虎だ! お前は、虎になるのだ!!」
梶原一騎先生による不朽の名作『タイガーマスク』が、現代を舞台に甦る。主役となるのは、「タイガーマスク」と「タイガー・ザ・ダーク」という"二人"のタイガーマスク。光と闇、それぞれのやり方で秘密結社「虎の穴」への復讐を誓う若者の前には、一体、どのような運命が待ち構えているのか……。
新作アニメとして復活を遂げた『タイガーマスクW』は、主役のタイガーマスクが二人いるという斬新な設定が放送開始前からアニメファンとプロレスファン、双方の好奇心を大いに刺激しました。
さらには、アニメの制作に新日本プロレスが協力しており、棚橋弘至選手やオカダ・カズチカ選手ら、実在のトップレスラーが実名で登場。逆に、新日のリングには、覆面レスラーのタイガーマスクWが現れるなど、現実世界のプロレスとフィクションのアニメが立体的に交差する『タイガーマスク』というキャラクターとレスラーが持つ醍醐味を見事に21世紀に再現してくれています。
アニメファンとしてもプロレスファンとしても見どころタップリな本作ですが、何よりも劇中のプロレスアクションのクオリティと再現度が非常に高いのが嬉しいですね。
オープニングは、初代タイガーマスクの主題歌『行け! タイガーマスク』のリメイクであり、何と人気アーティストの「湘南乃風」が歌唱を担当しています。
ハッキリ言って、アニソン史に残る名曲中の名曲のリメイクということで、メロディが素晴らしいのは言わずもがな。ここは、編曲家としての腕の見せ所といえます。
ダンスホール・レゲエ的なフレーバーを加えた"燃え"系のアレンジが施された新生『行け! タイガーマスク』は、作品のイメージにもピッタリな勢いのある仕上がりに。
実在の新日レスラーやキャラクターたちが次々に画面に登場し、二人のタイガーマスクがスピーディーなレスリングを繰り広げるオープニングアニメーションのボルテージを上昇させてくれる非常にカッコ良い一曲です。
こうした大名曲のリメイクは、常に是非が付きまとうものですが、筆者としては今回のアレンジは、大いに是、是、是! 全力で大肯定をさせていただきます!
アニメで、そして、実際のリングの上で激闘を繰り広げる新しいタイガーマスクの勇姿と共に、この曲もジックリと味わっていただければと思います。