眠くなるのを待つはNG
――「寝ようね」と暗い部屋に連れて行っても本人に眠気がなくて部屋の中を歩き回って遊んでしまう、という場合はどうすればいいでしょうか?
清水:今の日本の生活習慣の中ではなかなか眠気は起こりにくいので、とくに幼児期は自分から眠くなったから布団に入るということはないと思った方がいいでしょう。
昔はよく「夜×時以降は大人の時間だから布団に入りなさい」と言ったものです。現代はそういう習慣を持っている人が少ないのかもしれないですね。
就寝時間が遅くなり、夜の睡眠時間が短くなると、どこかで睡眠を補おうとする行動が出てきます。お昼寝が長くなったりお休みの日に長く寝たりというのが、睡眠時間が足りていないサインです。
子どもが小さいうちにしっかりと睡眠習慣を作ってあげることは、親の大事な役割ではないかなと思います。
――子どもが自分から、眠くなったら寝てくれるかなと考えてはいけないですね。
清水:そうですね、昔は太陽に合わせて寝たり起きたりしていたので、電気ができた弊害と言えるのかもしれません。
わたしたちが今、一番問題と考えているのは、睡眠の大切さを自覚していない親御さんですね。
自治体や保健センターでは、睡眠が子どもの成長や発達にどれだけ影響を与えているかに気づいていない親御さんの存在が問題になっていて、そういう人たちにどう気づいてもらうかが一番の課題です。
私たちの講座に来てくださる方は、皆さん睡眠の影響についてしっかり考えてくださるんですが、それでもちょっと強めに、生活リズムが乱れると発達に影響しますとか、女の子だと初潮年齢がすごく早くなることがありますという話をしたりしますね。
――初潮年齢……。実際、そうなんですか?
清水:就寝時間が遅いだけではなく、生活リズム全体が乱れている場合、ということですが。体の内面に影響が及んでいるということの一例と言えるでしょう。
小学校2年生とか3年生で生理が始まるお子さんがいるのは、生活リズムの乱れと食生活の乱れとの関連が言われています。心配になりますよね。
夜の睡眠は10時間以上を目安に
――どのくらい睡眠時間があると安心なのでしょうか。
清水:子どもの場合、だいたい夜は10時間継続して眠れるような睡眠スケジュールを立ててあげると、発達に影響するような心配はなくなると考えています。
意外に思われるかもしれませんが、子どもの夜間の標準的な睡眠時間は生後3カ月から小学校低学年ぐらいまではほとんど同じで、だいたい9時間から11時間くらいなんです。赤ちゃんや幼児の場合は、これにお昼寝がプラスされるということです。
とくに子どもは光に敏感なので、朝日で起きやすいんです。朝6時に明るくなることから逆算すると、前の日の夜8時くらいには寝室に入っていたいですね。
――保育園に行っている場合も夜8時にはベッドへ行くべきでしょうか。
清水:保育園はお昼寝時間を長くとってあったり、お友達が寝ていると自分も寝る雰囲気になる、ということもあり、保育園に通っていない子よりお昼寝が長くなることが多いですね。その分、夜間睡眠が短くなる傾向はあります。
ただ、親が働いているということを考えに入れても、夜9時くらいにお布団に入っているように気をつけてあげられると睡眠不足の心配がなくなると思います。
わが子の睡眠の問題は、発達や成長だけでなく、となりで眠るママ自身の睡眠にも直結する問題です。
ご自身の娘さんの壮絶な夜泣きをきっかけに、子どもの睡眠の問題に取り組み始めたという清水先生。小学生になった娘さんは毎晩8時半にベッドに入り、朝6時前に起床して宿題をこなす早寝早起きぶり。
清水先生は「本当に、楽ですよ。習慣がつくと朝一人で起きてくれるので、たたき起こすこともありません」と笑顔で語ってくれました。
『安眠ガイド』の中で清水先生が提唱する、赤ちゃんを心地よくする簡単3ステップは以下の通り。
[ステップ1]朝は7時までに起こそう!
[ステップ2]お昼寝の時間を調整して、日中は活動的にすごそう!
[ステップ3]寝る前30分のイチャイチャタイムを作ろう!
この3つのステップに加え、意識して早い時間に寝室に入ることは、赤ちゃんだけでなく生活リズムが崩れ始めた2~3歳のお子さんにも役立ちます。
「うちの子は毎晩夜更かしで……」という方、今こそチャンスかもしれません。
シンプルな早寝早起きの基本に立ち返り、わが子もママも楽になる睡眠習慣を手に入れたいものです。