私自身は、作品を1回観ただけでは、すべてを理解できなかった。といってもいっぱい観に来てほしいということではなくて、観れば観るほど、伝わってくるメッセージがたくさん詰まっている作品です。

舞台が広いので、次の展開へつながるヒントを、他の違うところでやっているシーンもあります。もちろん、それを見過ごしたからといって、ストーリーがわからなくなってしまうわけではないんです。

だけど、視線のやりどころに困ってしまうくらい、広い舞台を存分に使っている作品です。特に初めて「ウエスト・サイド・ストーリー」を、この劇場で観る人は、1回で全部の内容を把握できないかもしれないと思います。

私は映画を1回観て、舞台を観ても、本当の内容を把握できなかったから。初めて観たときは、ダンスや歌のエンタテインメントの部分しか入ってこなかったから。

でも、この作品で一番伝えたいのは、実はエンタメの部分ではなくて、「差別」や「禁じられた恋」、「人が死んでしまったときどうなるのか」ということだったりするんです。

ミュージカルが好きな方や、この作品をよく知っている方にとっては、当たり前のことかもしれないけど、例えば、この作品が『ロミオとジュリエット』の戯曲を元にした作品だということも、最初は知らなかったから。

私の勉強不足でもあるんだけど、役者の私でさえ知らないことが、こんなにもある作品なので。余計に、たまにミュージカルを楽しむという方は、作品の背景をたくさん調べてくることも少ないと思うんです。

そういう方たちに、“2時間半の上演時間、1回だけで、本当に伝えたいテーマを伝えられるのかな”とも思うんです。もちろん、限られた時間で伝えきりたいと思っているけれど。

でもこの作品に、はまってもらえたら、もう1回観に来てもらった方が、今回のステージアラウンドは、より作品の世界観に入れる空間になっていると思います。

--1回目はエンタテインメントを楽しんで、2回目以降はまた、視点を変えて観ると伝わるものが変わってきそうですね。

そうですね。何度観ても、飽きることはないと思います。やっている側もそう思えるくらい、新鮮に、かつ戦いながら皆、役をやっています。観るごとに違う、新たな発見がたくさん詰まっている作品です。

--だから何十年も続いている作品なのかもしれませんね。時代や、人種、境遇でも見方が変わってくる作品ですね。

そうですね。海外の作品だから、海外の人がやるからこそ伝わってくるものがもちろんあると思います。

でも日本でも、この作品が持つテーマと通じることに、すごく苦しんでいる人たちがいることも実際にあるから。日本の人たちが、この作品をやることに意味があると思うんです。私たちと同世代の方をはじめ、よりたくさんの方々へ、

「少しでも気づいてほしい」

という気持ちを伝えたくて、キャスト全員でこの作品をやり遂げようと思っています。ただただ、「舞台がよかった」っていう感想も嬉しいけど、“エンタメだけじゃないテーマも含めて観てもらえたら、考えてもらえたらいいな”って、すごく思っています。

--ありがとうございます。『ウエスト・サイド・ストーリー』Season2のお話は、次回もお聞きしていきますね。では後半は、佐江ちゃんの年末年始を振り返っていきましょうか。

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