パソコンやスマートフォン(スマホ)、ゲーム機など、生活の中でなんらかの“画面”を見る頻度がますます増えています。
2016年度の文部科学省調査では、「裸眼視力が1.0未満の小学生は31.46%にのぼり、小・中・高校生ともに過去最高の割合を記録」、という結果もでています。
若者にも広がる「スマホ老眼(労眼)」対策をはじめ、子どもの視力悪化を防ぐために取り入れたい習慣について、『日めくり毎日えんきんトレーニング』の著者であり、Rサイエンスクリニック広尾院長・医学博士の日比野佐和子医師に伺いました。
軽く見られがちな目の症状。悪化すると「失明」にもつながる!
――視力低下の背景には、どんな環境が関係しているのでしょうか。
日比野佐和子医師(以下、日比野)「いわゆる“老眼”は40代前後から出てきますが、“スマホ労眼”は、近くばかりを見る状態がずっと続くことによって起こります。
首や肩が凝るのと同じように、目も同じところばかりを見ていると、眼精疲労の症状が出てきますし、ずっとピントが1点に合ったままになるため、目のピントを合わせる筋肉などが固まった状態になってしまうのです。
今、近視人口はどんどん増えています。けれども、“近視は悪化すると失明にもつながる”、ということはあまり知られていません。実際、目がちょっとぼやけるぐらいだと、『疲れているのかな』と見過ごしてしまう方が多い。
普段から見えているのが当たり前という感覚で、目の症状が悪化していることを、軽く考えがちなんですね」
成長過程にある子どもはブルーライトなどの影響を受けやすい
日比野「最近、赤ちゃんや子どもにスマホを使用させることによる、視力低下の危険性も取り上げられています。特に怖いのは、まだ視力が安定していない2歳児くらいから、パソコンやアイパッドなどを見せることです。
レストランなどで、『おとなしくなるから』などの理由で見せるのだと思いますが、その時点でどんどん近視が進みやすくなります。TVゲームや、読書も含め、小さい頃から近方視の作業が多いと近視になりやすいのです。
子どもの目は発達過程にあり、未熟なので、スマホやタブレットから出ているブルーライトが透明な水晶体をすり抜けて網膜(フィルムにあたる部分)を傷つけるのではないかとも考えられます。
また、とても近い状態で画面を見ることも、視力低下の原因になります。
ブルーライトはそもそも太陽光にも普通に含まれていて、覚醒に関与しています。
睡眠ホルモンと言われるメラトニンの分泌を抑制するため、夜間の過剰暴露は睡眠障害にかかわると言われます。体内時計やホルモンのバランスにも影響を与えるわけです。
電磁波によるがんや小児白血病との関連、脳への影響の懸念もあります。
子どもの脳は敏感に反応しやすく、身体も小さく弱いですから、成長期にある就学期までの子どもの携帯やスマホの使用は、大人以上に悪影響を受けやすいのではないかと思います。
小さい子どもにはあまり長時間見せないほうがいいですし、できるだけ使わせない方がいいと思いますね」