大きなインパクトなので今後どんどん取り上げられるはずですが、まだあまり危機感がないようです。
朝はスマホで目覚め、メールやラインのチェックをし、朝食を取りながらネットニュースを読んで、通勤途中もスマホ、会社ではパソコンに向き合い、休憩時間・帰宅途中もスマホ、ベッドに入ってもスマホ……というように、現代人は人類史上あり得ないほど眼を酷使しています。
ここで重要なことは、目に入る情報は多様化しているのに、実は目の動きやピント調節は単調になっていることです。
長時間継続して手元の近いところばかりを見る、画面上を動かす視線は屋外で景色を見渡すほど動きません。
目が悪くなる原因は、現代の環境にあり、そこで生きていく中では、ほっておけばどんどん近視が進んでしまいます。
一度目が悪くなると、視力が自然に戻ることはありません。近視(近眼)は、眼球が前後に伸びて大きくなってしまう状態なのですが、一度大きくなったものは元に戻せません。
風船を一度大きく膨らませると、空気を抜いても伸びた状態が残り、元通りにならないのと一緒です。その大きくなった眼球に対して、レーシックや手術などで対処するしかない。
だから、若い世代の近視対策としては、できるだけ環境因子が大きくならないように注意しなければなりません。
長時間見る場合には間に休憩を入れて目を休める、時には目をぐるぐると動かしてあげる、しっかりと瞬きをしてあげる、といったことが大切です」
――最近では、太陽光に含まれる「バイオレットライト」と近視抑制効果との関わりについての研究が、慶応大学のグループによって発表されました。
林田:「太陽光の中にはいろいろな波長の光が含まれていて、その中のある波長が近視に対して抑制的に働く、という論文が過去にもあります。
ある特定の波長の光が鍵を握っているようですが、毛様体筋(目の筋肉)は自律神経で制御されており、屋外に出ると本能的に交感神経優位になるので、そういった部分も関与しているのかもしれません。
近視は“手元を見ている作業”を続けるだけでも進んでしまうので、その意味でも、1日に80分~2時間程度、子どもを外で遊ばせることは大切だと思います」
こまめに視線をずらし、2~3m離れたものを見る。夜はリラックスする時間に
――厚生労働省では、パソコンや携帯情報端末を使った作業におけるガイドラインを定めています。
林田「パソコンなど、何かしらの画面を1日4時間以上見る人のためのガイドラインなのですが、今、ほとんどの人が1日4時間以上見ていますよね。45分経ったら15分休みなさい、というのも現実的には無理があります。
視線をずらすとか、画面から目をそらすとか、そういったことをこまめにやるのがいいと思います。
5秒でも10秒でも、少し疲れたら天井を見上げるとか、外の景色をぼーっと見るとか、部屋の隅の観葉植物を眺めるとか。2~3m離れていれば、目は安静位の状態になりますので。
夜には、照明を落とし、ブルー系の光を抑えた暖色系の明かりにすると目が休まります。リラックスし、身体が休まると目も休まります」
VRなど視覚に訴える機器も次々に誕生し、将来的にますます目を使う時間が増えていきそうな時代。意識して目を休める時間をとり、目を酷使しないような生活を心がけた方がよさそうです。