課金をしつつ、音楽制作をしつつ…

桑原:カップリング曲を作るにあたって考えたのは、『あんさんぶるスターズ!』には新規ストーリーを読めるイベントが月に2回、ストーリーの付いているガチャが2回あるんですが、カップリングには、そのイベントのストーリーコンセプトに合わせた曲を作ったら面白いんじゃないか、ファンの人が喜んでくれるんじゃないかと思ったんです。それでひたすらゲームのイベントを走ったこともありますね(笑)。

――えっ?

桑原:僕、最初の頃のイベントは常に100位くらいをキープしていました。スクショも撮ってますよ(笑)。リリースしたばかりのころはユーザーの皆さんも様子見だったので、最初の頃は100位くらいなら行けたんです。課金をしつつ、音楽制作をしつつ……(笑)。

――それはなかなかのペースですね。

桑原:それでいざ曲ができて、収録が始まるじゃないですか。スタジオに入る前は100位くらいでも、収録が終わって出てきたら500位くらいに落ちてるんですよ(苦笑)。それがつらくなって、制作を続けながらイベントを走るのは無理だと気づきました。

――そこに早く気がついてください!

桑原:(笑)。収集癖的なところがあるんですよね、「星5のカードを5枚重ねないと(※『あんさんぶるスターズ!』のカードは5枚取得するとそのカードのパラメータがMAXになります)」みたいな。

ユニットひとつひとつがアイドルとして成立するように作る

――不思議なのが、『あんさんぶるスターズ!』っていわゆる「音ゲー(ゲーム)」や「リズムゲー」ではないですよね、何ゲーっていうんですかね。

桑原:「ノベルゲー」でもありますよね。一番収まりがいいのは「キャラゲー」でしょうか。

――ですから、「キャラゲー」だからこそ「キャラクターソング」、「ユニットソング」が重要になるのかなと思うんですが、とはいえゲーム中に曲が聴けることが殆ど無いですよね。ゲームの中でも試聴コーナーがあるくらいで。

桑原:とくに最初の頃は「ゲーム内試聴」という概念も無かったので、ホーム画面のバナーから飛んでYouTubeに行くみたいな。第一弾のときは、どのくらい反響があるのかはわからなくて、試聴動画があがってすぐに100万再生くらいされていて、びっくりしました。

――たくさんの人に聴かれているんですね。

桑原:それはすごく嬉しいことです。『あんさんぶるスターズ!』はまだアニメ自体が放送されていない中で、高い注目を集めています。それは皆さんがキャラを愛してくれているからで、それだけ魅力的なコンテンツなんだと思います。自分もそこに魅力を感じてやらせてもらっています。

――桑原さん自身がゲームのことを好きだからこそ、音楽も良いものになるのでしょうか。

桑原:そうだと嬉しいですけど(笑)。第一弾のときは自分たちのチームのみでの制作だったんですけど、第二弾からHappy Elementsさんから「こういう方に頼んでみたい」という話も出てきて、極力かなえられるように、自分たち以外の外の作家さんも繋いでみたりもしました。

――「格式高く情熱的なユニット」とされるValkyrieの楽曲はALI PROJECT、「伝統芸能を重んじる和風ユニット」紅月には和楽器バンド、「戦隊ヒーローユニット」流星隊にはヒャダインさんの参加が話題になりました。

あんさんぶるスターズ! ユニットソングCD 第2弾 vol.04 紅月 ©2014 Happy Elements K.K

桑原:そういうレーベルの垣根を越えることができるのは、作品の力かなと思います。

――ジャニーズやAKB48も色々な最前線のクリエイターを迎えて楽曲を作っていますよね、そういう意味ではまさにアイドルというか。

桑原:最終的にキャストさん (声優)がキャラを愛してくれて、「キャラになっている」からこそ、どういう曲が来てもユニットの色を残せているのかな。

自分の感覚としては、Happy Elementsさんと「このユニットだったら次はこういう曲が作れるんじゃないか、盛り上がるんじゃないか」と話し合って提案していって、一緒に作っていく。ユニットひとつひとつがアイドルとして成立するように作る、というのを念頭においています。

――キャラクターの声を担当している方の中には、若手の声優さんや俳優さんもいらっしゃいますよね。

桑原:そうですね、このゲームの特徴としては様々な経歴の方々がキャストとして 参加されているので、「どなたがいるから気を遣って」とかではなくて、できるだけ皆さんに収録を楽しんでほしいと思っています。

自分も音楽をやる人間なので、初めての歌収録で気合い入れて臨んだのにけちょんけちょんにされたら悲しいですし、それだと次が怖いと思ってしまうから、それはやだなあと。キャラクター感はこっちでジャッジするんで、レコーディングは楽しんでもらえればと思っています。

歌に関しても、例えばもともとすごく歌のうまい声優さんでも、作中の時間の流れを考えて「この曲はこの時期だからもう少し幼く歌ってください」とか、「この時期ならもう少し自信を持って歌ってください」ということは考えてます。キャラクターの成長はすごく意識しています。