「ジュース、零さないでね」「忘れ物をしないでね」「負けないように頑張ろう」一見、丁寧な応援フレーズですね。でも、これってマイナスに作用してしまうことがあるようです。
『1人でできる子になる 「テキトー母さん流」 子育てのコツ』の著者の立石美津子がお話します。
ジュース零さないようにね。
- 子どもがコップにジュースを入れようとしているとき…
「ジュースをテーブルに零さないように上手に入れてね」 - 子どもが牛乳を運んでいるとき…
「牛乳、零さないように運んでね」
こう言われると…子どもの頭の中にはまず「零さないようにしなくては」がインプットされます。
そして“零す”ことに意識が行ってしまい、緊張のあまり手がグラグラして零してしまうこともあります。
平均台
平均台は幅10センチくらいしかありません。床からも1.25メートルの高さがあります。
体育の練習中、コーチから「絶対落ちないようにね」と応援されたとしたら…「落ちてはいけない、落ちてはいけない」と意識し過ぎて足がガクガクと震えきっとオットトトトトと落ちると思います。
でも、まったく同じ10センチの幅でも、この線が床に書いてある状況で「この上を歩きましょう」と言われるとスイスイ歩けます。
何故、10センチの幅の線の上を難なく歩けるのでしょうか。「落ちるかもしれない」と一瞬たりとも思わないからです。
でも、前者のように「落ちないように気を付けてね」と言われると、“落ちる”ことに意識が行ってしまい、本当に転げ落ちてしまうのです。
人前で話すとき
筆者は人前で講演する機会が多いです。何度やっても緊張します。
緊張しないで話せるように、自律訓練の呼吸法を試したり、ヨガをやってみたり、アロマを嗅いだり色々試してみました。「緊張しないように」あれこれ手を尽くしていたのです。
「前日はちゃんと質の良い睡眠をとらなくてはならない」と思い、結局不眠になりました。「ちゃんと寝なくては!寝なくては!」と思う行為がいけなかったのです。“良い睡眠をとること”は大切ですが、そのことが生活の中で最優先順位となっていました。
心療内科に行き、精神科医にそのことを相談しました。すると医師は次のように言いました。
「緊張しないようにと“あれこれ手を尽くしていること”その行為自体が緊張感を高めているのです。緊張することが悪いことだと思わずに、為すべきことに目を向けてください。為すべきことは講演することです」
これも同じことだと思います。
ラーメンを食べている猿
実験です。今から指示に従ってください。
「ラーメンを食べている猿をぜったーーーーーーーーーーーーいに思い浮かべないでください!」
どうですか?「ラーメンを食べている猿」の姿が脳裏にチラチラと浮かびませんでしたか?
もし「何も浮かばない」あるいは「ハンバーグを食べている猿」が浮かんだと答える人がいたとしたら?おそらく、その人達も最初は“ラーメンを食べている猿”を思い浮かべたのではないでしょうか。
でも、「思わないでください」の指示があったので、最初に頭に上ってきた映像を打ち消したり、“ハンバーグを食べる猿”に置き換えたのではないでしょうか。