ベビーシッターによる子どもへの性犯罪のニュースが世間を震撼させて、数ヶ月が経とうとしています。
子どもを持つということは、時にこうした危険から子どもを守らなくてはならないということでもあり、ますます子育てが大変な時代だと感じさせます。
女の子だけでなく男の子であっても、性被害等の犯罪の対象になる可能性があります。子どもを被害者にさせないため、また万一被害者になった時に泣き寝入りしないために、親はどんなことを事前に知っておく必要があるのでしょうか。
また親自身に知識がないと、子どもを守るどころか子どもを追い詰める親になる可能性も。
ところで、女性を守る法律について優しく解説した『おとめ六法』(上谷さくら・岸本学 著)が話題を呼んでいます。幅広い年代の女性向けの書籍ですが、子どもを持つ親なら知っておきたいことも満載です。
著者で弁護士である上谷さくらさんに、子どもの性被害についてお話を伺ってきました。
子どものトラブル、どんなことが起こり得る?
――子どもが成長するにつれ、親の目の届かないところでさまざまなトラブルに巻き込まれる可能性が増しますよね。未就学児であっても、安心はできません。具体的にどういったトラブルが考えられるのでしょうか。
上谷さくらさん(以下、上)「小さいうちだと、些細なケンカから大ケガになったりすることが考えられます。
少し大きくなると、いじめの問題があります。小学校高学年になるとカツアゲといった行為もありますよね。また、今はSNSやゲームでのトラブルもよくあります。
性的なものだと、先生や保育士からの性的虐待があります。子どもの性的な部分を写真に撮るなど、本当にありとあらゆることがありえます」
――子ども同士のケンカにすぐに親が出るのは、子どもがコミュニケーションを学ぶ機会を奪うという見方もあり、見きわめが難しいと感じます」
上「男の子同士の場合はふざけているだけなのか、行き過ぎているかの判断が難しいことが多いですね。個人差も大きいですし。
そんな時は、やはり子どもの様子を普段からよくみておくこと、子どもが話をしてきたらじっくり聴いてあげることが大事です」
――なにかあった時、変化に気づきやすいということでしょうか。
上「“なにかおかしいな。なにかあったな”と思ったら、子どもの話を聴く。
この時に親が最初から“大したことないじゃない”と突き放すのは絶対にダメですね。実はその奥に大事なことが潜んでいることがあるからです」
――親に聴いてもらえそうにないと、子どもは心を閉ざしてしまいますよね。
上「子どもが事の重大さに気づいていない可能性は大いにあることなので、“助けて”というサインを出していなくても、まずは話を聴いてあげることが大事です」
実態がみえにくい性犯罪
――特に性被害は、子どもは何が起きたのかわかっていないでしょうし、自分に起こったことをうまく言語化できない子がほとんどな気がします。
上「自分で言える子どももたまにいますが、たいていすぐには発覚せず、思春期以降にわかることが多いんです」
――言葉以外で親が察知する方法はないのでしょうか。
上「突然、人が変わったように粗暴になって友達とのトラブルが増えたり、それまで大好きだった場所に行きたがらなくなったりなど、これまでと違った変化が見られる場合があります」
――言葉の代わりに行為でSOSを出しているのですね。痛ましいです。どういった被害が多いのでしょうか。
上「親が加害者の場合もあるのですが、それ以外でも性犯罪の加害者の多くは、身近な大人であることが非常に多いです。たとえば親戚のおじさん、近所のお兄さんなど。
そういった場合は、親も、子どもがその人と2人っきりでいることに特に疑問を持っていない場合がほとんどです。」
――それは油断しますね。
上「もちろんそうでない人もたくさんいるとは思いますが、加害者になる人は、まず子どもの信頼を得て、それを逆手にとって、だんだん行為をエスカレートさせるのです」
――いきなり犯行に及ぶことはないのですね。
上「いきなりは少ないですね。それに、小さな子どもだと仲のいい大人の膝に乗ったり、だっこされたりは普通にしますからね。犯行に及ぶのは、そうやって仲良くなってからです。
子どもの年齢が少し大きくなると“お母さんには内緒だよ”と言って口止めする人もいます。子どもは約束を守ろうとするため、さらに行為がエスカレートし、被害が発覚しないまま常態化することもあります」
――悪質ですね・・・子どもとしては、仲良くしている意識のまま、性被害を受ける状態にいつのまにか移行してしまっているわけですよね・・・。
上「被害に気づくまでは、親もその人を信頼している場合が多いので、まさかと思うんですね」
――人を疑うことを子どもに教えるよりもまず、親が被害の起こる可能性をなくしていくことですね。