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実際に子どもが被害に遭ってしまったら
――実際に子どもが被害に遭うことは、家族にとっても大変つらいことだと思うのですが、親がまず気をつけたいことはありますか?
上「絶対に避けるべきことは、子どもを叱ったり、“あんたがそんな短いスカートをはいているから”などと子どもに落ち度があるように言うことです。
子どもは勇気を出して親に打ち明けているのですから」
――一番の味方だと思っている親にそう言われたら、気持ちの持って行き場がありませんよね。性被害に遭った子どもは人から言われなくても「こんな目に遭うのは自分のせいだ」と思ってしまうと聞いたことがあります。
上「また、被害から時間がたっていても“なぜ言わなかったの”と問い詰めたり、“早く忘れなさい”“気のせいだよ”など子どもの訴えを否定する発言もやめてください」
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――全面的に子どもを受け止めてあげることが必要なのですね。
上「まずは打ち明けてくれたことをねぎらい、子どもが安心する言葉をかけてあげてください」
――親も動揺してしまいそうですが、それが一番大事なのですね。
上「被害に遭った家庭でよく感じるのが、お父さんの存在感の薄さです。さらに相談を受けていると、お父さんの協力も重要だと感じます。
お母さんは娘の被害を自分のことのように受け止めるのに対し、まるで何もなかったかのように、無関心な態度でいるお父さんがいることが気になります。」
――そこはお母さんと一緒になって娘を支えてもらいたいところです。
上「自分の娘がそんな目に遭ったことを受け入れられない場合も多いようです。
被害に遭う可能性は誰にでもあります。それなのに、母親を責めてしまったりするのです。 “おまえがちゃんとみていないから”的なことを言ったり」
――それはつらいです。逆に、両親が協力して子どもに向き合えば、子どもの被害回復にいい影響を与えそうですね。
上「年齢が上になってくると、性被害に遭ったことをお父さんには知られたくないと思う子どももいるので、その気持ちは尊重してあげる必要はあります。
ですが、子どもが性被害に遭った時、お父さんにもできることはいろいろあると思います。母親は直接の被害者ではなくても、娘を心配する気持ちが強くてPTSDを発症するなど憔悴される方も少なくありません。
そんなお母さんの体調を気遣うなり、普段やっていない家事をするなり、やれることはあります」
――子どもが性被害に遭うというのは、家族の危機ですよね。そういった時のためにも普段から、夫婦で子どもを育てるという意識を高めておくことは大事だと感じました。
子どもが打ち明け話をしやすい親になるには
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上「子どもは親のことをよく観察しています。普段、親が世間体を気にすることを知っている子どもは、親が知って困るようなことは言わなくなります」
――それはキツイですね。子どもは親が自分をちゃんと守ってくれるか、みているんですね。なにかあったら言ってもらえる親でいたいです。
上「性被害については、親が普段から教えられることはあります。
身近な大人以外の犯罪だと、下校時に体を触るなどのわいせつ行為や、通学電車での痴漢などがあります。たとえば、進学して一人で電車に乗るようになるタイミングで、痴漢についての知識は絶対に伝えなくてはならないことですね」
――そういうことを知っておけば、いざ痴漢にあった時に親に話しやすいですね。
上「また“水着で隠れる体の部位は、他人には見せないし触らせない大事な場所”といったことも、小さいうちから繰り返し伝えていく必要があると思います」
――「プライベートゾーン」と呼ばれる場所ですね。
それと、自分の感覚を大事にすることも伝えていった方がいいと思うのですが、いかがでしょうか。
上「そうですね。自分がイヤだと思ったら、イヤでいい。無理して人と合わせなくてもいい、と伝えることも大事なことです」
――今日は貴重なお話をどうもありがとうございました。
*
子どもが性被害に遭うなんて想像もしたくない、という人もいるかもしれません。
ですが、いざ被害に遭った時、学校や警察、支援団体に駆け込んだのに適切な対応をしてもらえないことも、残念ながら今の日本ではありえます。
悪いのは加害者であることには違いありません。ですが、いざというときに子どもを守るため、まず親が備えることは非常に大事です。
いざというときに適切な対処ができるようになるためにも『おとめ六法』、ぜひ手に取ってみてくださいね。
【取材協力】上谷さくら
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弁護士(第一東京弁護士会所属)。犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員。
元・青山学院大学法科大学院実務家教員。福岡県出身。青山学院大学法学部卒。毎日新聞記者を経て、2007年弁護士登録。保護司。