『アクションヒロイン チアフルーツ』
この夏、アニメファンだけでなく、特撮ファンからも熱い視線を集める作品が、この『アクションヒロイン チアフルーツ』です。
"ご当地ヒロイン"(女性が演じるローカルヒーロー)によるヒーローショーが大人気となり、地方活性化の有効策として注目を集める架空の日本を舞台に、女子高生たちが自分たちが愛する町を再興する為に人気ご当地ヒロインを目指す「青春+アイドル+ヒーロー」な作品です。
東映特撮でお馴染みの脚本家である荒川稔久さんがシリーズ構成を手掛けるヒーローアニメ……ということで、放映前から特撮ヒーローファンからも注目されていた本作ですが、その特撮に対する熱情は本作において大きな特徴となっています。
放送開始前に公開されたティザー・ムービーの時点で、主演のM・A・Oさんに、出演作である『海賊戦隊ゴーカイジャー』と『宇宙戦隊キュウレンジャー』のフレーズを盛り込んだ台詞を喋らせている時点で、そのセンスは既に爆発していたのですが、本篇では、そのボルテージは更にヒートアップ! 劇中の台詞やシークエンスのアチコチに特撮ネタ(とアニメパロ)が顔を出します。
その元ネタも、『仮面ライダー』と『スーパー戦隊』という東映特撮ヒーローの2本柱は勿論のこと、かつて東映が世に送り出した『メタルヒーロー』や『東映不思議コメディ』、更には、円谷プロダクションの『ウルトラマン』に至るまで、新旧の様々な特撮作品が使用されているのです。
特に、『メタルヒーロー』への愛と熱は相当に高いようで、『宇宙刑事ギャバン』の主題歌に登場する名フレーズ「胸のエンジンに火をつけろ」が、劇中で重要な台詞のひとつとして引用されるなど、同シリーズのパロディネタが各話に登場。その温故知新な特撮愛を際立たせています。
とはいえ、特撮ネタの数々に対する知識がなくても、本作のエンターテイメント性は些かも揺るぎません。
何故ならば、本作は、メインとなるドラマやコメディに"青春ドラマ"や"アイドルアニメ"として確固たる強度がある為、奇抜な設定やマニアックなパロディを抜きにしても十分に楽しめる完成度を誇っているからです。
仲間を集め、観客を楽しませる為に、そして、町を盛り上げる為に、ご当地ヒロインショーを少しずつ完成させていくドラマ性は、少女たちの「成長物語」としても見応え抜群! 特撮パロの数々に大笑いしつつも、シッカリとドラマ面でも見せてくれる、地力を持った作品となっています。
今期、特撮ファンに限らず、様々な層にチェックしていただきたい注目作です。
『異世界食堂』
1週間に一度だけ異世界に通じる扉が開く不思議な洋食屋「ねこや」。定番の洋食からデザート、和食まで、あらゆる「美味」を取り揃えたこの店の料理を目当てに訪れるのは、神にエルフ、魔族の戦士といずれもひと癖もふた癖もある「あちらの世界」の住人たちで……。
『ダンジョン飯』や『異世界居酒屋「のぶ」』など、昨今、隆盛を見せる「ファンタジー+グルメ」な漫画やライトノベルの作品群。この『異世界食堂』もそうした新感覚なグルメ作品のひとつで、ファンタジーと料理を掛け合わせた作品性が大きな特色となっています。
物語は、オムニバス形式の群像劇であり、「ねこや」を訪れた異世界の住人によるヒューマンドラマ(人間じゃない方も大勢出てきますが)に合わせて、メインの料理が描写されるという構成です。
客人のドラマに絡めて料理を描く……先行の作品でいえば『深夜食堂』や『ザ・シェフ』といった漫画作品にも通じる人情味のある作劇は丹念かつ堅実で、決して派手さはないものの見応えのある物語性をアニメの中で描くことに成功しています。
そして、そのドラマ性において、特別なスパイスとって本作の個性を浮き立たせているのが劇中におけるファンタジーの要素です。
料理に合わせてエピソード毎に、異世界の文化や世界観、或いは各種族ならではの嗜好性が描かれており、ファンタジックな世界観とグルメ要素の橋渡しが巧みに行われています。
また、本作はWEB小説発のノベル作品が原作ということで、食事の際に、その美味や食人の心情を描写するのに、モノローグという形式が採られています。これが、アニメになるとそこに声優の「声」という調味料が加わるわけで、本作に参加している豪華声優陣による「食レポ」は、今作の隠れた楽しみどころとなっています。声優ファンにも強く推薦をできる作品なのです。
ややもすれば、少しばかり地味に見えてしまう作品かもしれませんが、その実、アニメ作品としての旨味がタップリと詰まった1本だと思います。flying DOGプロデュース作らしい素晴らしい劇伴の数々や主題歌にも注目していただきたい1作。