3: 睡眠時間が少ないのに、夜眠れない

よくある悩み
「赤ちゃんに合わせた生活で、自分の睡眠時間が少ないのに、なぜか夜、眠れない」
原因
玉木「授乳期間中は、夜泣きや夜間の搾乳やミルク作りで寝不足になり、子どもが大きくなっても、育児に加え、家事・仕事などで自分の時間を削ってしまい、脳がキャパシティオーバーになりがちです。
子どもの発達状態や教育問題、ママ友との関係、コロナ感染に対する恐怖など、心配事も後を絶ちません。
赤ちゃんの生活リズムに合わせることで、自分のペースが保てなくなり、ストレスから眠れなくなり、『寝なければいけない』と思えば思うほど、眠りにとらわれ眠れなくなってしまうという悪循環をもたらすことも多く見受けられます」
生活習慣による対処法
「一晩の睡眠のうち、ぐっすり眠る『脳の睡眠』は前半、夢を見る『身体の睡眠』は後半に現れ、これらの睡眠がバランスよくとれると翌日は快適に過ごせます。
脳が休まっていないと感じるときは日中、少し瞑想したり、赤ちゃんと共にリラックス効果のある音楽を聴いたり、日光浴をしたりして、少しまどろんでみると良いでしょう。
体が休まっていないと感じるときはストレッチやヨガなどで身体をほぐすと、心もほぐれてきます」
ストレスや体力低下による不眠に用いる漢方薬
酸棗仁湯(サンソウニントウ)
体力が低下し心身ともに疲労している場合に服用。
加味帰脾湯(カミキヒトウ)
虚弱体質で精神不安がある場合に服用。
子育てママのへのアドバイス

今回、アドバイスをいただいた悩み以外にも、一人一人、それぞれに睡眠の悩みがあることでしょう。そこで子育て中のママに向け、自分の睡眠とどのように付き合っていくべきか、玉木先生にアドバイスいただきました。
玉木「労働には、肉体労働・頭脳労働・感情労働があり、育児はこの3つが重なると同時に、新型コロナウイルス感染症により心配や恐怖等で感情労働がさらに増しています。
乳幼児期はあまり真面目に家事育児に取り組みすぎるとやることに追われ、心配事も増え、心も体も疲弊してしまいます。
子どもの成長は早いものです、お世話の大変な乳幼児期は赤ちゃんと過ごせる、かけがえのない幸せなひとときでもあります。
寝なければいけないと思えば思うほど寝られなくなってしまうので、眠れなくても脳と身体を上手に休め、不眠自体にとらわれないようにすることも大切です。
上手に手抜きしたり、人の力やサービスなどを利用したりして赤ちゃんに合わせながらも自分のペースを作り、夫にも協力してもらい、リフレッシュして自分自身が疲れ果てないようにすることが、睡眠には大切。
嫌なことや心配事も多いと思いますが、疲れがたまったときは胸を開いて鼻から息を大きく吸って、口から悩みやストレスを出す意識で深呼吸をし、毎晩、愛に包まれた幸せな気持ちとイメージを持って布団に入ってみることをおすすめします」
もし自分では解決できないほど悩んでいるのであれば、早めに医師に相談することを玉木先生は勧めます。
玉木「睡眠は健康のバロメーター。不眠は病気にもつながりやすいので、早めに医師に相談することをおすすめします。
生活習慣の改善や漢方などのさまざまな治療法が相談できます。漢方では、体は『気(き)・血(けつ)・水(すい)』の3つの要素からなると考えられています。
漢方薬のなかには『血』の巡りを整えたり、興奮しすぎた“『気』=エネルギー”を鎮めたりして眠りやすくする処方もあります」
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子育てをしていると特に忙しく、ストレスも感じやすい上に、ここ一年はコロナの影響もあり、心身ともに疲弊しがちな毎日です。
まずは自分でできることを生活習慣から改善していき、気になることがあれば、早めに医師に相談することも一つの方法です。
【取材協力】玉木優子先生

たまきクリニック院長
北里大学医学部医学科卒業。2008年たまきクリニックを開設。西洋医学と東洋医学を融合させ、心療内科も合わせ、保険診療による漢方、気功、アンチエイジングなど赤ちゃんからお年寄まで心と体の両面から患者様一人一人に合った医療を心がけている。