今、この時期に舞台に立つということ

中井貴一 撮影:渡邊明音

――今回の作品における、中井さんご自身の挑戦とは?

それはやっぱり、“この時期に演劇をやる”ということでしょう。

実はものすごく不自由が多くて、以前はそんなことしなかった、ありえなかったようなことを出演者は背負って、演じなければならない。

そして今後も、もしかしたらこの形態が常識になってしまうかもしれない…、そんな物理的な苦悩が実際にあるので、今回はそれをどう乗り越えていくかが大きな課題だろうなと思っていますね。

でもお客様もいろんなものを背負いながら観に来てくださるので、それに見合う、満足していただけるものを作り上げようとしています。

――中井さんも観客となって、PARCO劇場オープニング・シリーズをご覧になりましたか?

はい、『大地(Social Distancing Version)』も観ましたし、『藪原検校』も。

劇場に来ると、お客様の様子を見てしまうんですよ。皆、大丈夫なのかな?って。危険を冒してまで来てくれてありがとう!という気持ちになって(笑)。

『大地』のカーテンコールで、お客様が「待ってました!」という熱い思いを込めて拍手されるのを見て、何も関係ないのに涙が止まらなくなりましたからね。あの人、何で泣いてるんだろう?と思われたかもしれない(笑)。

本当に、お客様に感謝の気持ちでいっぱいになりました。

――今度はその拍手を舞台上で受け止めることになりますね。これまでも中井さんは『コンフィダント・絆』や『趣味の部屋』などの傑作をPARCO劇場から発信して来られました。あらためて新生PARCO劇場に立たれるお気持ちを聞かせてください。

昨年10月にWOWOWで放送された「劇場の灯を消すな!」というプロジェクトで、三谷幸喜さん演出の朗読劇をPARCO劇場でやらせていただいたんです。

『大地』のセットがある舞台に乗らせていただいて。新しくなった劇場は、もっと「あ〜こうなったのか〜」という感じに変わっているかと思ったら、その時の感触は「わ〜、変わらないじゃん!」(笑)。

舞台に乗った感じが、以前と全然変わらないんですよ。それがすごく嬉しかった。

こんなふうに温かみを残したまま、新しいものに生まれ変わっていくのは素敵だと思いました。

劇場ってとくに、究極のアナログだと思います。目の前で人が芝居するんですから。

だから、ここから先、このPARCO劇場の持つ温かみをどのように継続していくか。それが僕ら俳優たちの仕事なんだろうなと思いますね。

中井貴一 撮影:渡邊明音

【公演情報】

日程:※開幕日未定

会場:PARCO劇場

料金:11000円(全席指定・税込)

作・演出:G2

出演:中井貴一、貫地谷しほり、藤原丈一郎(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、矢作穂香、村杉蝉之介、たかお鷹

※新型コロナウイルスの影響により、4月17日(土)~28日(水)までの公演が中止となりました。詳細はPARCOの公式HPでご確認下さい。