「喜劇」のホンの中に「悲劇」を探す
――中井さんが演じるのは、その昭和の映画館経営者の息子であるフリーの映画プロデューサー。どんな人物でしょうか。
僕たちのいる業界の話ですから、そういったプロデューサーは何人も知っています。
G2さんが「僕は映画のことは何も知りません」と言うので、じゃあ僕が取材をしていろいろ聞いてきて、お教えしますと。
作劇として必要な部分は残しながら、整合性のあるプロデューサー像を作ったという感じです。
プロデューサーって結構、口の上手い詐欺師タイプが多いので(笑)、あえて小難しく何かを参考にしなくても役作りは出来たかなと思います。
――G2さんの稽古場の雰囲気、共演の方々の様子など教えていただけますか。
今は稽古真っ盛り、ここからが正念場というところですが、G2さんは人間の心の移り変わりといった点を細か〜く演出なさっていますね。『メルシー!〜』の時とはまた違った細かさを感じています。
今回、70代、50代、30代、20代と各世代が揃っていて、本当に面白いですよ。G2さんの言っていることが、20代の人たちに通じてない時があったりして(笑)。
実際に言ったものとは違いますが、「棚からボタ餅」みたいな言葉に、20代の二人が「???」となって、「……棚からボタ餅って何ですか?」ということが実際に起こっているんですよ。見ていてすごく面白い(笑)。
以前は考えたことはなかったけれど、今はもうこんなに世代が離れているんだなあ、と感じます。
貫地谷(しほり)さんがちょうど中間の世代で、僕らと若者たちのつなぎ役をしてくれているので助かっています。
本当に初日どうなるんだろう!?ってドキドキ、ワクワクしている感じですね。
――公式サイトでG2さんが「中井さんを始め、コメディの達者な役者が揃いました」とコメントされています。ご自身ではコメディを演じることについて、どのように意識されていますか?
僕は、“あざとく笑わせる”ことは好きじゃないんですね。お客様が舞台を観ながらほくそ笑む…、そんなふうに進んでいくのがいいなと思っているんです。
僕が舞台をやる時の絶対条件は、“お客様が舞台の中で生活している人々を覗き穴から見ている、そんな舞台でありたい”。
皆が一生懸命に生きていて、ちょっとちぐはぐだったり滑稽なことが起きたりして、それを外から見て、皆が笑っている…、そんなふうに作りあげられたらいいなと。
僕が喜劇のホンをいただいた時に、一番最初にやる作業は、そのホンの中の悲劇を探すことです。
悲劇のホンをいただいた時は、喜劇を探すこと。それを必ずやるんです。
そのコントラストがあればあるほど、余計なことをやらなくて済む。
今回のこの『月とシネマ』は、実は喜劇ではないと僕は思っているんです。
悲劇ではないけれど、子が親を思う気持ち、そういった感情がベースにあるので、それを引き出すためのスパイスとしてコメディがあると思っているんですよ。
お客様をいかにリラックスさせるか。緊張を解きほぐした中で起こる悲劇と、緊張している中で起こる悲劇では、悲劇の在り方が全然違いますよね。そこが舞台の良さなんです。
生の空間でいかにお客様の気持ちを作り上げて、物語を進めていくか。今回はそういった作品になっていると思います。