ロックバンド・クイーンのアルバム『オペラ座の夜』の名曲の数々が鳴り響く中、源平合戦を下敷きに、『ロミオとジュリエット』の後日譚が綴られていく――。
2019年に幕を開けたNODA・MAP『Q』:A Night At The Kabukiは、その斬新なアイデアと豪華なキャスト、劇空間の美しさなどが融合し、多くの観客を魅了した。そんな名作が、メインキャストはそのままに3年ぶりのに再演される。
そこで“それからの愁里愛”を演じる松たか子と、“源の愁里愛” “愁里愛の面影”を演じる広瀬すずに話を訊いた。
すずちゃんは美しくて強い、人生最高潮の愁里愛そのもの
――野田秀樹さんの野心作『Q』:A Night At The Kabukiですが、改めて作品としての魅力とは?
松 すごくカラフルですよね。まずキャストがとても派手で、竹中(直人)さんのテンションを目の当たりにする楽しみがあったり(笑)、視覚的にとても刺激がある。それでいて布や扉を使った繊細な仕掛けもあって。でもふと気づいたら、まったく違う場所に連れて行かれる。その感覚は、やはり野田さんならではだと思いました。
広瀬 異色のものがいろいろ織り交ざっているのは、きっと野田さんにしか生み出せないものなんだろうなと感じました。しかもさまざまな表現によって、人間がいろいろなものになって、その場の空気感まで一気に変えてしまう。そこにすごく感動しました。
――広瀬さんは本作の初演が初舞台でした。松さんの目に広瀬さんはどう映っていましたか?
松 人生最高潮の愁里愛に本当にふさわしい、美しくて強い、愁里愛そのものだったと思います。それはワークショップ、稽古の時からずっと素敵だと感じていて。いつも新鮮に一緒に過ごせた気がしますし、なにか変にまとまっていくというよりも、どんどん爆発していくような感じ。
それこそ“それからの愁里愛”としては、その成れの果てをしっかり(笑)、彼女が流れ着いた先がこうなるってことに誇りを持たなきゃと。私もすずちゃんに負けないよう、しっかり頑張ろうと思えました。
――初舞台の現場に松さんがいることは、非常に心強かったと思います。松さんからどんなことを学んだと思いますか?
広瀬 稽古についていくのに必死で、毎日が新幹線のように通り過ぎていくような感じではあったのですが……。でもある日、野田さんのおっしゃるニュアンスの理解が難しい時があり、でも松さんを見たら特に迷うこともなく、普通にやられていたんです。それで「あれどういう意味ですか?」と聞いたら、「私もわかんないけどやっている」とおっしゃって(笑)。
松 (笑)。
広瀬 だから私も松さんと同じことをしようと思いました(笑)。またカンパニーの皆さんは私が一方的に信頼出来る先輩ばかりだったので、私になにかあっても必ず助けてくれる。そう勝手に思いながら、甘えながらやらせてもらいました。