アカデミー賞授賞式は「めっちゃ怖かった」

撮影:山口真由子

――ここからは少し奥平さんご自身のことをお聞きできればと思います。デビュー作の映画『MOTHER マザー』で「第44回日本アカデミー賞 新人俳優賞」を獲得して、華々しく役者人生をスタートされましたが、今、奥平さんにとって役者のお仕事はどんなものですか?

楽しいです。勉強することばかりですが、それが楽しいです。自分とかけ離れた役をやるとかは大変ですけど、その人について考えて、演じると、その人の人生を過ごしたような感覚になれるんです。そんな感覚ってこの仕事でなかったら、なかなかできないじゃないですか。そういうのも楽しいです。

もちろん大変なこともいっぱいありますけど、それと同じくらい、もしくはそれ以上に楽しいことがあります。毎回、毎回、壁があるけど、絶対にそれを乗り越えなくてはいけなくて、乗り越えられない、ではダメなので、そうやって一つひとつクリアできていくのも楽しいなって思います。

――まだ役としては、今回で4人目だと思うのですが、この時点で、そんなふうに感じられているんですね。

逆を言えば、まだこれしか経験していないから、また違う役をやれば違う考え方も出てくるだろうな、と思います。だからこそ、今はいろんな役や現場を経験したいです。そうしないとわからないこともたくさんあると思うので。

撮影:山口真由子

――アカデミー賞の「新人俳優賞」は、多くの若手俳優の方が、最初に目標として目指していくものだと思うのですが、それを持って役者人生を始めることにプレッシャーはありませんか?

前に、(ドラマ『恋する母たち』で共演した、藤原)大祐の連載に、(宮世)琉弥と一緒に呼んでもらったときに、3人とも目標を「アカデミー賞 新人俳優賞」と言ったんですけど、それをありがたいことにいただけて。まさか自分が獲れるなんて、そのときは思ってもいなかったし、2人からは「獲れたじゃん! 良かったじゃん!」みたいに言ってもらえて、自分でもすごくうれしかったんですけど、いただくにも責任があるというか。もらって単に「ヤッター!」じゃなくて、これからに期待されていることの証でもあると思うので、頑張らなきゃ、という、使命感というか、プレッシャーもあります。

ただあまり気にし過ぎても、自分にできないことはできないし、今できることを一生懸命やるだけだとも思うんです。その結果、またあの舞台に立つことができたら、応援してくださった方や、家族への恩返しになるとは思うので、1回獲ったから、次も獲るぞ!くらいの勢いでいたいとは思っています。

――実際にあの会場にいたときは、どんな気持ちでしたか?

いや~怖かったです(苦笑)。だって、僕がテレビや映画で見たことがある方しかいなかったですもん。みなさんの威圧感とかが怖いんじゃなくて、そんな場所にいる自分が怖い、という。隣には長澤(まさみ)さんがいるし、もう何この光景、みたいな。

本当に僕はまだ芸能人の方に慣れていないのに、アカデミー賞以上に、あんな豪華な人たちを一度に見る機会なんてないじゃないですか。なんてことを体験しているんだろう、なんでここに自分がいるんだろう、と思うと、怖かったです。1年前にテレビで長澤さんが「最優秀助演女優賞」を獲っているのを見ていて、すごいな、って思っていたら、次の年、自分が同じ場所にいたので。人生って何が起こるかわからないですよね(笑)。

撮影:山口真由子

――結果、映画『MOTHER マザー』で長澤さんは「最優秀主演女優賞」も獲りましたし、世間から高く評価された作品ともなりました。奥平さんにとっても、今後、超えていかなければならい作品となりますよね。

僕自身としては超えようとは思っていない、というか。もちろんあのときよりもいいことができるようにはなりたいですけど、今回の作品はあれを超えるぞ、という気持ちではなく、その作品で自分なりのベストを尽くしたい、と思うんです。その結果、世間的に見て『MOTHER マザー』を超えられなかったとしても、自分自身のベストを出せて、作品の中でいい役割を果たせたら、僕にとってはそれがうれしいことですし、満足だと思います。

ただ僕の俳優人生にとって、『MOTHER マザー』は大切な存在にはなるんだろうな、とは思います。今はまだわからないですけど、もう少ししたら、あのころの自分が恥ずかしくなったりもするのかもしれないですけど、そうやって、恥ずかしいと思えるくらい、成長していきたいです。

――今後やってみたい役柄や、作品のジャンルはありますか?

今回、『ネメシス』で、ミステリーとコメディの要素がある作品をやれたので、今度はミステリー主体のもの、コメディ主体のもの、どちらもやってみたいな、と思います。ミステリーは説明とか、伏線とかが大変だと思いますし、コメディも振り切れなればできないと思いますし、どちらも楽しそうだな、という気持ちになりました。

あとは同年代の役者さんたちと共演してみたいです。今のところ大祐と琉弥くらいしかいないので(苦笑)。僕は学園ものっていうタイプではないとは思うのですが、何かしら共演できたらうれしいですね。


デビュー作の映画『MOTHER マザー』で長澤まさみさんの息子役に抜擢されたことでいきなり注目を浴び、「アカデミー賞 新人俳優賞」まで獲得した、まさに期待の新星と言える奥平さん。ただご本人は至って平常心というか、自分を客観的に見つつ、新たな作品に真摯に取り組まれているのも魅力的。次はどんな奥平さんが見られるのか、楽しみです!

作品紹介

ドラマ『ネメシス』
毎週日曜夜10:30~日本テレビ系にて放送中