作品選びのポイントは、どこに勝算を持てるか
佐藤健という俳優が、今や同世代と一線を画す存在となっているのは、こうした彼独自のイズムがあらゆる仕事に行き届いているからだろう。
その20代を振り返っても、連ドラは『Q10』『とんび』『天皇の料理番』と寡作ながら良質な作品に出演。映画では、『バクマン。』のようなエンタメ性の強い作品から、『亜人』のようなアクション、そして『8年越しの花嫁 奇跡の実話』のような感動ラブストーリーまでジャンルレスに活躍。
そして、『半分、青い。』『義母と娘のブルース』とテレビドラマの王道に返り咲いたのち、『恋はつづくよどこまでも』で場外ホームランを放った。その歩みには、明確な意志が感じられる。
「この作品はどこに勝算を持てるか、ということは毎回考えますね。やっぱり勝算が見えないとなかなか踏み出せない。
ポイントは何でもいいんです。脚本が素晴らしいからでも、僕がやればよりいい作品になりそうと思うからでもいい。それは作品ごとに違いますけど、勝算を見つけられるかは僕にとって非常に大事です」
特に20代の頃は、タイミングを重視していたと言う。
「まだ世にあまり知られていない頃は、よくも悪くもイメージがつきやすい状態。偏った仕事ばかりをしていたら、一定のイメージがついてしまうなと思って。
それを避けるために、今回ライトな作品をやったから、次はまったく違う方向の作品をやろうとか、そういうことを20代の前半から中盤まではよく考えていました」
佐藤健が過ごした20代。それは、俳優としての地盤を固める時間だった。
「とにかく20代前半は自分のステージを高めることに重きを置いていましたね。この作品をやったことで、さらに上のステージに行けるかもしれない。そうやって自分の価値を上げていくことが重要でした。
それが、20代後半になるとある程度地盤ができて、そこに自信も持てたので、遊べる余裕が生まれた。自分の好きなことをやっても、ある程度イメージが崩れることもないかなと思って、やりたいことをやるようになりました」
現在32歳。これから先の未来は、どんなイメージを描いているのだろうか。
「より自分のやりたいことをやっていきたいですね。露出の頻度というのは特に意識していないです。自分がいいと思えるものをやっていく。そうやってキャリアを積み重ねていければ」
YouTubeチャンネルにSUGAR、アパレルブランド『A』の立ち上げ。思えばこの1年あまり、多くの人が佐藤健から飛び出すさまざまなアイデアに驚かされてきた。おそらくすでに佐藤健の頭の中にはこれからのビジョンがはっきりと見えているはずだ。
次のカードは何を切るのか。その戦略は、彼しか知らない。だけど、ひとつだけ確かなことがある。それは、これからも私たちは佐藤健に驚かされていくということだ。
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』は2021年6月4日(金)より全国公開。