10年に及ぶシリーズの完結編となる『るろうに剣心 最終章 The Beginning』が現在公開中だ。主人公・緋村剣心を演じた佐藤健が、『るろ剣』への思いを語った。
プレッシャーがあろうがなかろうが、やるべきことは変わらない
佐藤健に、プレッシャーという言葉は似合わない。
10年に及ぶシリーズの歴史のエンドマークとなった『るろうに剣心 最終章 The Beginning』。
主演の双肩には、作品の成功と、興行としての成功、その両方が重くのしかかる。これだけビッグバジェットの作品ならなおさらだ。
けれど、佐藤健は常にクールだ。プレッシャーに怖気づき、戸惑う姿など想像できないほどに。
「これまでプレッシャーを乗り越えるという思考になったことがないですね。プレッシャーがあろうがなかろうが、やるべきことは変わらないじゃないですか。
それよりもやるべきことは、自分が何をしなくちゃいけないのかを明確にすること。それがわかったら、あとはやるだけ。だから、プレッシャーについて考えたことがないんです」
明晰な言葉で、そう自分の思考回路を説明する。それは、俳優の言葉というより、むしろ有能なビジネスマンのプレゼンテーションのようだった。
「『るろうに剣心』で言えば、初めて実写化の話をいただいたとき、あれだけ魅力的な漫画を実写で表現できるのかなと思ったんです。けれど、監督といろいろ話をさせてもらう中で、いけるかもと思った瞬間があった。それが、アクションチームがつくったアクションムービーのようなものを見せてもらったときでした。
あそこで、自分の目指すべきものを提示してもらった感覚になった。そして、自分のやるべきことも見えた。僕のやることは、このムービーにあるような動きを身につけること。そうとわかれば、あとはひたすら練習に打ち込むだけ。自分にできるかなんて恐怖心は関係ないんです」
不要なものに心をとらわれない。その精神は、よく研ぎ込まれた刀のように美しい。演技アプローチも、確かなロジックが土台となっている。
「『The Beginning』に関しては、今までの剣心とはアプローチがまったく違っていて。今回は最も力を抜いた状態で現場にいました。
これまではずっと少年ジャンプの漫画原作ということもあって、キャラクターをリアルな人間として落とし込むことを大切にしてはいるものの、ある種のエンタメ感、漫画感を意識していたんですね。でも、今回は違う。『The Beginning』では、そういった漫画感を一切意識していませんでした」
では、佐藤健は何に心を置いて『The Beginning』の人斬り時代の剣心を生きたのか。答えは、時代劇においても生身の人間でいる、という精神だ。
「『The Beginning』では、生身の人間でいたかった。あの幕末の時代に本当にこの人は生きていたんじゃないかと思えるものを目指していました。
『The Beginning』は日常の生活をしているシーンが多く出てくるので、そこでの所作を丁寧にやっていくというのは当然のこととして、いちばんはいわゆる無理をしないこと。何もしないで、ただいる。感じたままその場にいる、ということをしていました」