「暢が可哀そうであればあるほど藍子のキャラクター性が引き立つ」

撮影:鬼澤礼門

――犬飼さんご自身が演じる田川暢の印象はいかがでしょう。

僕は暢に対して、いろいろ思うところがあります。藍子に“サレテシマウ”原因は暢にもあるのではないかと思うんですよ。ナヨナヨし過ぎているし、とある理由でつけているピアスも僕からしたらあり得ないなと。中盤くらいから「暢も暢だよな……」「もしかしたら実は一番おかしいんじゃないか……!?」と思いました(笑)。

――見方を変えるとそういう側面もあるかも……。そんな暢を演じる上で意識したことはありますか?

暢が可哀そうであればあるほど藍子のキャラクター性が引き立つと考え、見るからに可哀そうな表現をしようとは思いました。例えば、なるべく強い顔をしないようにしようとか、気持ち声を高めにしようとか。僕、日常生活では強い顔になることが多いのと、声色も低めなので、そうならないように意識しました。

――実際、犬飼さんが暢を演じられるのは少し意外でした。これまで演じられてきた役柄とは少し違うなと。

僕自身、こういった役柄は初めてだったので緊張しました。ここ2年くらいは個性的な役ばかりを演じていたから、すごく勉強にもなりましたね。あまりにも個性の強い役をやり過ぎていて、それが普通だと思っていたけど、本来役者ってこういう役もやるんだよなと(笑)。

――裏切る側の役は演じられていましたけど、裏切られる側の役はなかったですよね。

そうですね。あとはコメディ作品がすごく多かったんですよ。ここまでずっとシリアスな作品はほとんどなかったかもしれません。

――今回のようなシリアスな作品や役柄を演じていて、特にどんな感情が一番大きかったですか?

とりあえず「悲しい」気持ちが一番大きかったですね。とはいえ、本作では最終的に反撃していくので、溜まりに溜まったフラストレーションが一気に解放された瞬間はすごく気持ちよかったです。