家事に追われていると「ほら、トイレ行きたいんじゃないの」などと、ついつい子どもの言葉の先取りをしてしまったり、話をじっくり聞いてやれなかったりすることはありませんか。
そんな時は、「傾聴ボランティア」のある方法を使うとうまくいくことがあります。
『1人でできる子になる 「テキトー母さん流」 子育てのコツ』の筆者の立石美津子がお話しします。
「傾聴」って何?
筆者は以前、一人暮らしの老人の話し相手になる“傾聴ボランティア”の研修を受けたことがあります。
その時習った「悪い話の聞き方」が下記のようなことだそうです。
×他のことをしながら上の空で聞く
×黙って相手の話を聞く
×「うん、うん」「はい、はい」とただ言うだけ
×相手の話を全部聞かず教訓めいたことを言う。または否定したり話の腰を折る
これらの行動に対して「良い話の聞き方」は、
○相手の話を全部聞き終わった後、相手の言った言葉をそのままオウム返しする
これで相手は「自分の話をしっかり聞いてもらえた。理解してもらえた」と思うそうです。
「聞く」と「聴く」の違い
子どもの話を上の空で聞いていたり、お皿を洗いながら、スマホをしながらただ相づちを打つだけのことってありませんか。
これは「聞く」です。
“きく”という言葉を検索すると、“聞く”と“聴く”が出てきます。
聞く…相手の話を音声として聞き取る
聴く…相手の言葉に寄り添い耳を傾ける
子どもの話も「聞く」ではなく「聴く」にすると、子どもは「ちゃんと聞いてもらえた」と感じるようです。
具体例を見てみましょう。
私は幼児教室で長年指導をしていました。ある日、スーパーに夕飯の買い物に行き、偶然生徒の親子に出会いました。
その生徒は授業中も態度が悪く、落ち着きのない子どもでした。スーパーでも同じで大騒ぎして走り回っていました。
ママは目の下にくまを作り、子育てに疲れ切った様子で暴れる子どもを追いかけ怒っていました。
そんなとき、目が合ってしまいバツが悪い状況になりました。母親は気を取り直す間もなく私の顔を見るなり「ああ、立石先生、こんにちは…私、もうこの子をここに置き去りにしたくなっちゃうんですよ」と呟きました。
そこで、自分が先生であることを忘れて「そうですよね。落ち着かないこと多いですよね。置き去りにしたくなってしまうのですね」と口から出てしまいました。
でも、一度出てしまった言葉はもう消すことが出来ません。「しまった!」と思ってその母親の顔を恐る恐る見上げました。するとお母さんの顔が晴れ晴れしています。
涙目の笑顔で「先生!ありがとうございます。わかってくれて。そんな風に言ってくれた人初めてです」と逆に感謝され、拍子抜けしてしまいました。