近年、映画の“音”にこだわった上映が増え、観客を集めている。
コロナ禍で多くの人が自宅で映画やドラマを楽しむようになったが、空間を満たす大音響と繊細な音響空間は劇場ならではのもの。
近年は映画館も様々な機器を導入し、細部まで調整を繰り返すことで極上の音を響かせる試みを行っており、TOHOシネマズ日比谷では音にこだわったイベント「10万分の1秒の音響映画祭」が開催中。
映画館での“音”の体験は唯一無二のもの
コロナ禍のステイホーム期間が長引いたことで大画面テレビや、大画面が味わえるヘッドマウントディスプレイを購入する人が増えたが、周囲への影響を考えると音量の大きさには限界がある。ヘッドフォンを用いればある程度の音は鳴らすことができるが、空間に音が響く体験とは別のもの。
大きな音を鳴らすことができて、鳴った音の反響や減衰まで考えて空間が設計されている映画館の体験は唯一無二のものだ。
そこで近年、映画館では通常の上映よりも音量を上げて調整した上映や、高性能スピーカー、低音域を鳴らすことに特化したウーファーを増強して上映する機会が増えている。
右と左のステレオから、劇場の四方を囲むサラウンドへ、さらに天井にまでスピーカーを設置して空間を包み込むオブジェクト指向の音響へ映画の音そのものが進化していることもあり、“良い音、迫力のある音”で映画を楽しみたい観客は増えているようだ。
“10万分の1秒”単位まで音響調整した劇場プレミアムシアター
長年に渡って映画ファンから愛され続けている爆音上映、ライブプロデュース集団とタッグを組んだLIVE ZOUNDなど人気の仕組みは数多くあるが、TOHOシネマズ日比谷では“10万分の1秒”単位まで音響調整した劇場プレミアムシアターを営業している。
映画館のスピーカーはスクリーンの裏側やサイド、後方など様々な位置に設置されており、スピーカーが鳴った瞬間と、その音(波)が観客の耳に届く瞬間はわずかにズレている。
この劇場ではそのわずかなズレを音響の専門家が10万分の1秒単位まで調整し、スピーカー同士の音の遅延を極限まで解消した“滲みのない音”が鳴るという。