最近、メディアなどでよく聞かれるようになった「STEAM教育」。なんとなく知っている人もいると思いますが、じゃあ説明して、と言われたらうまく答えられない人も多いのではないでしょうか。

STEAM教育とは、「科学(Science)」「技術(Technology)」「工学(Engineering)」 「芸術・教養(Art)」「数学(Mathematics )」の5つの頭文字からとった言葉で、これら5つを統合的に学んでいく教育方法のこと。

とはいえ、具体的にはどういった内容なの? いまいちよくわからない!

そんな人のために、今回は数学研究者でジャズピアニスト、株式会社steAmの代表も務める、まさにSTEAM教育の第一人者である中島さち子さんにお話を伺いました。

以下から中島さんから教えていただいた、今STEAM教育が注目されている理由や実際の教育現場のお話、そして家庭でもSTEAM教育を実践する方法をご紹介します!

今、STEAM教育が注目されるワケ

――ずばり、STEAM教育とはどういうものなのでしょうか?

中島さん「数学を学ぶ、芸術を学ぶ……というよりは、『数学者のように考え、アーティストのように作る』といったらいいのでしょうか。

科学や数学って、実は永遠に答えが出ないかもしれないものを追求することそのものが楽しい学問なんですよね。それは、答えがあるものを学ぶのではなく、唯一の正解があるとは限らない“問い”に対してアプローチしていくこと。

経済産業省の『未来の教室』というサイトで使われている『ワクワクを中心とした“知る”と“作る”の循環』という言葉があるんですが、すごくいいなと思っています。

“知る”ことで、自分はこうしてみたいと“作る”気持ちが刺激されて、その間にまた発見=“知る”があって、循環していく。これがSTEAM教育ということだと思います」

――今、STEAM教育が注目されている背景には、どういったことがありますか?

中島さん「ちょっと前までは、テストもマルバツがつけられるものが多く、マニュアル通りに何かができる力が大事でしたよね。

20世紀は、手に職を付けて生きていくためにもそういう力が必要だとされていたんですが、21世紀になって、技術が爆発的に進んできて、今やインターネットで検索すれば大体の知識は得られる時代です。そしてYouTubeやSNSが発達し、みんなが発信することができる時代。

時代背景としては、問いも答えも見えない、自分にとっての幸せとは何ぞやという、不確実な時代になってきたことがあります。答えって、マルかバツかだけじゃないよね、と。

そこであなたは何を考えているのか、というのを形にするのが大事になってきています。AI技術が発達してきたからといってAIに全部やってもらうのではなく、人間のアイデアで何かを生み出していくことが、万人に求められているし、できる。そしてそれは生きる喜びにもつながります。

私は『創造性の民主化時代』と呼んでいるんですが、誰しもが表現し価値を生み出し、その喜びを感じることができる時代なんじゃないかなって。まだ100%なっているわけではないけど、なりつつある。

多様な人たちが多様な人たちなりに社会に関わり、価値を生み出していくことのできる時代だし、それはもしかしたら本来的な人間の生き方につながるんじゃないかと思っていて。そういう思想のもとにSTEAM教育が生まれてきたんだと思っています」