習いごと、遊び…日常生活でできるSTEAM教育とは?

――家でもSTEAM教育を取り入れる方法を教えてください。

中島さん「特に未就学児くらいの頃は、自然の中でいかに遊ぶかが大事だと思います。五感も冴えるし、何より自然は情報量が多いんですよ。

コンピューター関係って、情報量が多いようで遮断されているので。入力の仕方にしても何にしても制限されているので、自然と遮断された状況になるんですよね。

小さいうちは、まず自然のなかで遊ぶこと。感覚も身体性も開くし、問いもたくさん生まれると思います。

例えば砂場遊びなんかでも、作りたいものを形にすることもできますし、自分なりの自由な遊びができますよね。好きなことで無目的に遊ぶときが、一番発見が多いんです。

遊びの中で、砂場でお城を作りたいとか、自然とプロジェクトが生まれてくるはず。それに対して、たくさん遊んだことのある子はいろいろなことを五感で知っているので、こうしたらうまくいくんじゃないかという試行錯誤ができるんです。

テクノロジーだって最初は人間が道具で生み出してきたものですよね。物を作ることはエンジニアリングだったり、アートだったりする。数学も実は豊富にあふれているし、自然の中には創造性がたくさんあって、自然の中で学べること、感じ取れることはすごくあります。

自然と遊ぶこと、その中で試行錯誤すること、とにかくいっぱい失敗しながら、自分でやりたいことをやってみること。親はそれを応援してあげるだけです。

声をかけるなら、答えを誘導するような質問や、親が良し悪しの評価を決め付ける言葉はできるだけ避けてほしいと思います。一緒にワクワクして、面白がってください」

――具体的に、自宅や公園でできるもので、こういう遊びがおすすめというのはありますか?

中島さん「その方がどういうことが好きで、今何に一番興味を持っているのかによります。

例えば動物や昆虫が好きなお子さんであれば、実際に見に行ってみる、スケッチしてみる。紙や粘土で好きな生き物を再現してみたり、自分でオリジナルの生き物を考えてみるのもいいですね。

お絵かきが好きなお子さんならば、とにかく描く! いろんな画材を試してみるのもよいかもしれないですね。色や手触りも含めて、自分の好みが見えてくるのではないかと思います。

お花、草、果物を絞ってオリジナル絵の具を作るのも楽しいですね。化学的な不思議にも自然と出会うはずです。

ブロックや積み木が好きなお子さんでしたら、オリジナルピタゴラスイッチを作ってみたり、いろんな面白い建築を見に行って光や風の流れを感じてみたり。自由自在に組み合わせていろんな形を作れるブロックで、自分なりの館や橋を作ってみるのも面白いかもしれない。

ゲームが好きなお子さんであれば、自分が好きなゲームの特徴を研究したり、自分ならどんなゲームを作りたいか、オリジナルゲームのアイデアを出してもいいと思います。

じゃんけんでも、ちょっとした一工夫を加えて面白いオリジナルの遊びを作ることができます。自らルールを作るという体験も価値があります。まずは絵でストーリーを考えた後、デジタルで実際に形にしてみるのもよいですね。

なお、海外のSTEAM教育の本を翻訳した『「なぜ?」「どうして?」がよくわかる わくわく科学実験図鑑』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)もおすすめ。色がカラフルで、良い意味で余白がある内容なので、自分なりの『好き』や『発想』につながるかもしれません。

でも、たとえ今、没頭できるような好きなことがなくても大丈夫です。小さいうちはとにかく自由に、マイペースに遊ぶことが大事。その様子をよく観察していれば、「これが好きそう」「これをやっているときが楽しそう」とだんだんわかってくるものです。

そういうものを見つけたら、さりげなく応援してあげればいいだけ。

大体、親が何かをやらせようと思うと子どもはイヤだってなりますよね。親が“こうあってほしい”と願って子どもにやらせることは、よほどこっそりうまくやらないとバレます(笑)」

――こういう習いごとをやらせよう、というものでもないんですね。

中島さん「もちろん習いごとをして、それによって開かれる場合もありますよ。習いごとをさせるなら、その子の心が動いているものを、その子が自分で選び取ったかのように選んでもらうのがいいと思います。

そして、興味が変わっていったりするのも仕方ないことだし、その子によって時期とかペースとかもありますので、あまり一喜一憂しないで、好きなものがあったら応援してあげるというのがいいかなと思います。

見ていてあげることは大事です。日頃から小さい大人だと思って対話、議論をするのがいいと思います」