病院にかかるまでもない産後のメンタル不調の対処法

こうした産後のメンタル不調は、薬を使わない対処法として、

・家族や周りの人の力を借りる
・自分の気持ちを素直に伝える
・一人でがんばりすぎない
・完璧を目指さない
・こまめにストレスを発散する
・周囲の人とコミュニケーションをとるよう心がける

などの方法があるといいます。

そして、漢方から対処することもできると宮内さんは話します。

宮内「産後の身体は、漢方の考え方では『気(き)』や『血(けつ)』が不足している状態にあるといわれています」

「気」の不足

宮内「気は、栄養物質を届けたり、手足や内蔵を動かしたりするエネルギーを表します。

気が不足することで、産後に起こりやすい症状としては、疲れやすい、体力の低下、やる気が起きないなど活力の低下があります」

「血」の不足

宮内「血は、栄養物質を届けたり、精神活動を支えたりするものです。血が不足することで、産後に起こりやすい症状としては、貧血・めまい、抜け毛、耳鳴り、乳汁分泌不良、神経症(不安感・憂うつ感など)などがあります。

また、血の不足による一般的な症状としては、顔色が青白い、肌の乾燥感、髪がパサつくなども考えられます」

症状によって、気と血どちらが不足しているか、おおよそ予想をつけることができますが、セルフチェックをするときにはポイントがあるそうです。

宮内「『気』の不足による症状では、主観的な側面が大きいですが、からだ全体を作る栄養物質である『血』の不足の場合は、肌や髪の乾燥感、貧血、顔色の悪さ、抜け毛など客観的な症状が多くなる傾向があります。

そのため、『血の不足による症状』の有無で、気だけ不足しているタイプなのか、気も血も不足しているタイプなのかでタイプ分けされるとわかりやすいかと思います。気と血の不足の状況によって、適した漢方薬を利用することも一つの方法です」

とはいえ、症状のセルフチェックを行う場合には、注意が必要です。

宮内「産後のメンタル不調は、産後うつやマタニティーブルーなど医師による治療が必要な疾患との明確な線引きはむずかしいです。

そのため、必ずしもご自身だけで解決できるとは思わず、かかりつけの産婦人科や、薬局・ドラッグストアの薬剤師など、身近な医療関係者に相談してみると良いかと思います」

今回は、さまざまな対処法が紹介されましたが、人によって不調の症状や度合いは異なります。もし少しでも不安を感じたら、自己判断せず、専門家に相談してみるのをおすすめします。

【取材協力】織戸 宜子さん(精神科保健指定医 精神科専門医 内科医)

内科医師として神戸大学病院にて研修。その後お産の多い(当時約1200人出産/年間)パルモア病院で勤務時に、母性内科・女性心療内科を立ち上げる。そこで、妊娠合併糖尿病・甲状腺疾患等の内科合併妊娠、女性特有のメンタルヘルスと心身両面よりの診療に力を入れる。その後神戸海星病院、慈恵医大病院等の勤務を経て、2018年から東京の代々木の森診療所にて女性メンタルヘルス外来で勤務。