撮影:源 賀津己

その透明感のある声質が絶大な支持を集め近年、数多くのヒロイン役を任されてきた声優・花澤香菜。彼女の新たな挑戦を感じさせる最新映画が『言の葉の庭』である。いちファンとして敬愛し、出演を熱望したという新海誠監督の作品で彼女が開いた境地とは?
 

(C)Makoto Shinkai/CoMix Wave Films
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『秒速5センチメートル』、『星を追う子ども』など独特の文学的描写と美しくも儚い色彩表現で高い評価を受ける新海監督の2年ぶりの新作。約束もないままに雨の日だけ、庭園で逢瀬を重ねるようになる高校生のタカオと年上の女性・ユキノ。夢を追う15歳と歩き方を忘れた27歳の出会いと魂の再生を繊細に綴る。

花澤自身、『秒速5センチメートル』が大好きで「まず何より新海さんの作品ということで、マネージャーに『オーディションを受けさせてください』とお願いした」という。

 

だが、これまで花澤が演じてきたヒロインの多くは10代の少女であり、最近の作品で「大人っぽい」と評された「PSYCHO-PASS サイコパス」のヒロインですら20歳。今回、演じたユキノは27歳で、花澤よりも年上であるという点もさることながら、仕事に行かずに庭園でビールを舐めたり、都会の集合住宅で孤独に打ちひしがれる写実的な姿はやはり、これまで彼女が演じてきたヒロイン像と大きく異なる。

「そうした違いはやはり強く感じてました。年齢の違いもそうですが、日常を繊細に描いている部分こそが新海さんの作品の魅力で、セリフも“物語”というより自然体なんですよね。そういった部分――例えば、家の中で少し気怠さを漂わせながら電話で話してるところなんかは、自分の中の見せたことのない一面だなと感じてましたね」