天空に広がる“不思議の国”へようこそ! 撮影/内田涼
『不思議の国のアリス』が生み出す文化現象をたどる初の大規模展『特別展アリス―へんてこりん、へんてこりんな世界―』が10月10日(月・祝)まで、六本木・森アーツセンターギャラリーで開催されている。
アリスにまつわる作品や資料約300点とともに紹介
代表的なシーンである「狂ったお茶会」のインスタレーション 撮影/内田涼
英国ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)を皮切りに世界巡回中の展覧会では、児童文学の枠を超え、アート、映画、音楽、ファッション、演劇、写真など様々なジャンルで表現されてきた『不思議の国のアリス』の世界とその広がりを、アリスにまつわる作品や資料約300点とともに紹介。
白ウサギを追って、ウサギ穴を落下していくアリスとは対照的に、私たちはエレベーターに乗り込み、上へ上へと、六本木ヒルズ森タワー52階に位置するギャラリーへ──。そこには日本オリジナル展示も加えた「へんてこりんな世界」が広がっていた。
ドジソンの手書きの構想や、挿絵を手掛けたジョン・テニエルの原画も展示
ドードーの複合骨格(オックスフォード大学自然史博物館) 撮影/内田涼
会場内は5つのセクションで構成されており、まずは「アリスの誕生」と名付けられたエリアで、イギリスの数学者だったチャールズ・ラトウィッジ・ドジソンが“ルイス・キャロル”のペンネームで同著を発表した約160年前、ヴィクトリア朝の時代にタイムスリップすることに。
ドジソンの手書きの構想や、挿絵を手掛けたジョン・テニエルの原画をはじめ、貴重な資料に触れることができる。
中でも目を引くのが、作中にも登場する絶滅鳥類ドードーの複合骨格。また、原作を基に耽美な少女と夢幻の世界を描いた金子國義をはじめ、酒井駒子、ヒグチユウコら日本人アーティストによるアリスたちも必見だ。
『不思議の国のアリス』は日本人アーティストの創作源になっている/金子國義『アリスの証言』『森の中のアリス』、酒井駒子『Alice』、ヒグチユウコ『落下するアリス』『アリス』 撮影/内田涼
続くセクション「映画になったアリス」では、初期のサイレント映画やハリウッド映画、ディズニーの『ふしぎの国のアリス』(1951年公開)、ティム・バートン監督による大ヒット作『アリス・イン・ワンダーランド』に至る映画化の歴史がひも解かれる。
「アリス」映画化の歴史は、映像技術の進化の歴史でもある 撮影/内田涼
驚かされるのは、時代やお国柄によって、様変わりするアリスの捉え方。
王道のファンタジーはもちろん、精神分析的なストップモーション(ヤン・シュヴァンクマイエル監督の『アリス』)、アリスのモデルとなったアリス・リドゥルの晩年を描く感動作『ドリームチャイルド』、政治のメタファーや国家啓蒙を盛り込んだ作品群など、自由な解釈を許容する『不思議の国のアリス』ならではの“多様な”翻案が垣間見られる。
晩年のアリス・リドゥルが少女時代を回想する映画『ドリームチャイルド』 撮影/内田涼
映画『不思議の国のアリス』のポスター(1933年)、映画『不思議の国のアリス』日本公開時のポスター(1933年 複製) 撮影/内田涼
また、映像技術の進化によって、いかに幻想的な世界がスクリーンに投影されたかを知る機会にもなっている。






































