新たな時代に対応する「学びの支援の充実」について

子育て世代で気になるのは、授業料減免の支援制度です。

提言の中では、『修学支援新制度の導入により、(住民税非課税世帯等の)低所得層に対する経済的支援が充実されてきた一方で、その対象とはならない層への支援が課題となっている』ことが指摘されています。

実際に就学支援新制度がスタートして2年が経過したことで、様々な課題が浮かび上がってきました。

そこで今後は、修学支援新制度の支援対象を拡大するともに、貸与型奨学金の返還について利用者の負担を軽減する仕組みを創設するなど、奨学金制度の改善が予定されています。

また、子どもたちの進路の選択に役立てるため、奨学金制度をはじめとする様々な仕組みについての情報を早い時期から、きめ細やかに提供することで、『誰もが、家庭の経済事情に関わらず学ぶことのできる環境を整備する』ことが提言されています。

具体的な取り組み7つ

学びの支援をより充実させるための具体的な取り組みとしては、7つの項目が挙げられています。

1. 学部段階の給付型奨学金と授業料減免の中間層への拡大
2. ライフイベントに応じた柔軟な変換(出世払い)の仕組みの創設
3. 官民共同修学支援プログラムの創設
4. 博士課程学生に対する支援の充実
5. 地方公共団体や企業による奨学金の返還支援
6. 入学料等の入学前の負担軽減
7. 早期からの幅広い情報提供

このうち1については、今まで修学支援新制度対象外となっていた中間所得層には朗報だと思われます。

ただし、いまのところは中間所得層の中でも特に必要性が高いと認められる、多子世帯や理工系・農学系の学部で学ぶ学生等に限られるようですのでご注意ください。

今後の制度改正に注目!

国土や資源に乏しい日本においては『人』こそが貴重な資源であると以前から指摘されてきましたが、『人』への投資を、国や企業が本気で取り組むための体制づくりが進められています。

本当に使うべきところに私たちの税金が効果的に使われているのか、制度の効果や今後の財源についてもしっかり注目していきたいところです。

提言の『基本理念』の項目には、国のベースとなる考え方として『日本の社会と個人の未来は教育にある。教育の在り方を創造することは、教育による未来の個人の幸せ、社会の未来の豊かさの創造につながる。』と明記されています。

この基本理念が広く認知されることで、これからの教育についての活発な議論が交わされ、柔軟な制度改正や様々な実践を通して、私たちおとなも含め、すべての子どもたちが生涯にわたり学び続けられる環境が整備されていくことが望まれます。

※令和4年8月現在の情報です

【執筆者プロフィール】髙柳 万里

キッズ・マネー・ステーション認定講師/ファイナンシャルプランナー
金銭教育を受ける機会が全くないまま社会人となっていたことに愕然とし、
必要に迫られて平成二十年FP資格取得。「創意工夫と試行錯誤」をモットーに、主に親子向け金銭教育や教育費関連について執筆しています。

「見えないお金」が増えている現代社会の子供たち。物やお金の大切さを知り「自立する力」を持つようにという想いで設立。全国に約300名在籍する認定講師が自治体や学校などを中心に、お金教育・キャリア教育の授業や講演を行う。2023年までに2000件以上の講座実績を持つ。公式サイト「キッズ・マネー・ステーション