台湾に行かなくても台湾なみの暑さを感じることができたこの夏、毎晩のようにビールが飲みたくなり、つまみになる料理作りに熱中した。
今回は台湾料理のなかでも、とくにビールに合う一品をお教えしよう。
台湾料理のなかでもっとも筆者のビール欲を刺激するのは、客家小炒という炒めもの。
以前、台湾で食べ歩き取材の最後にビールを1杯だけ飲みたくて、ビールのある店を探したがなかなか見つからず、やっと入った食堂でビールとともに頼んだのがこれだった。
唐辛子の辛味と甘辛い醤油の味付けで、ネギの香りと肉の脂がほどよく絡み合い、とてもビールに合う。
客家小炒は、倹約家で料理上手なことで知られる客家人の家庭料理。ありあわせの野菜や肉を炒めたもので、入れる野菜に特に決まりはない。
だが、台湾で何度か客家小炒を食べるうち、欠かせない食材があることに気付いた。干しイカと厚揚げである。
干しイカは、客家小炒独特の旨みの元であり、厚揚げはほどよい脂分をプラスしてくれる。
台湾では豆腐干と呼ばれる、ぎゅっと水分を絞った豆腐を揚げ炒めにするのだが、日本では厚揚げで代用できる。
干しイカは、スーパーの魚介コーナーでめぼしいものが見つからず、途方に暮れたが、あるとき気づいた。
「干しイカ(あたりめ)があるじゃないか!」
そのままだと硬いので、これを水につけてふやかしてみた。3時間ほど漬ければ使えるが、一晩漬けるとなおよし。その漬け汁も利用する。
豚バラ肉を使う場合はそれだけでも脂が出るので、十分に熱したフライパンに油を引かず、豚バラ肉(細切り、薄切りなど)をよく炒める。
あまり動かさず、じっくり焼くようにして炒めると脂が出てくるので、その脂で細切りにした厚揚げ、みじん切りにしたニンニク、赤唐辛子1〜2本を香ばしく炒める。
このあと、最初に投入する調味料は砂糖。豚肉に焦げ目がつき、ニンニクや赤唐辛子の香りがしてきたら、大さじ1杯ほど(好みで調整)の砂糖を入れてよく炒め、砂糖を溶かす。
長く炒めると焦げやすいので、砂糖が溶けたら干しイカとそのつけ汁を入れて全体になじませ、米酒、醤油なども加えてしっかりと味付けする。
煮汁がなくなるまで一気に強火で炒め、最後に青ネギ(筆者は九条ネギが好き)を短冊切りくらいの太さに切って投入。ネギは少し炒めると青みが際立つが、炒めすぎると食感が悪くなるので、1分ほど炒めればちょうどいい。
甘辛い、こってりした醤油味に、干しイカが入ることで味に深みが出る。まさにビールを美味しく飲むためのつまみである。
野菜は冷蔵庫にあるものでOKなので、ナスやズッキーニなどの夏野菜を入れて自分流の客家小炒をアレンジするのも楽しい。