©Animelo Summer Live 2013/MAGES.
  

そしてシンデレラたちのアニサマ初舞台は、なかなかにシビアなタイミングでした。それはなんと、ももクロの圧巻のパフォーマンスの直後です。でも、シンデレラたちはそんな心配を笑い飛ばすように、自然に「お願い!シンデレラ」で光の中に駆け出してきました。

10人というユニット構成はアニサマ史上でも最多クラス。それでも彼女たちは100人以上いるシンデレラアイドルのほんの一部です。三宅麻理恵さんは今回のアニサマが、アイマス関係での初ステージ。他のメンバーも、小さなステージイベントを含めても数えるほどしかアイマスのステージには立っていない人がほとんどです。

そんな状態で2万7千人が見守るステージに投げ出されたら、できることは練習で積み重ねたことを、一生懸命ぶつけるだけなんですね。幸い、彼女たちにとっては初めて見るような大観衆でも、観客の側は双葉杏や渋谷凛といったキャラクターのことを良く知っていました。

そして嬉しい誤算は、この夏のツアーやイベントからシンデレラのステージに新たに加わった新戦力たちの頼もしさです。

原紗友里さんのキラッキラの笑顔はこの大舞台でも陰ることはなく。開演前にTwitterに「わくわくが止まりません」と記した恐るべき17歳・黒沢ともよさんは、顔中に「楽しい!!」以外のことが書いていませんでした。

初公開の「輝く世界の魔法」で花道に並ぶ10人の姿を見て、最初に考えたのが「今、この光の海の中で彼女たちは何を思っているんだろう」だったのは、自分もプロデューサーである性でしょうか。

個人的には、五十嵐裕美さんの凛とした風情が印象に残りました。

縁あって新人の頃から彼女を知っていますが、非凡な演技力にも関わらずどこか後ろ向きで、無理無理と言いながらも難題のハードルを軽やかに越えていく、そんな印象がありました。事務所を選んだ動機が“脇を固めるような渋い役者になりたい”だった人です。その彼女が、アニサマ前に「アイドルが歌ってると(観客に)言わせてみせる」とまで言い切った驚きが、おわかり頂けるでしょうか。

人間、いきなりそこまで急に変わるものではないですが、たぶん彼女は腹をくくったのだと思います。一度腹をくくった人間は強いです。ある種の開き直りに、重ねてきた練習と覚悟が加われば、それは自信に変わるのかもしれません。

松嵜麗さんはヤクルトスワローズが大好きで、グラビア撮影でもアクティブなカメラマンにはおびえてしまうような、本当にごく普通の女性です。

それが“諸星きらり”としてステージに立つ時、きらりに会いに来るファンと接する時は、ごく自然に超絶テンションになるんです。そのかわり、小物やネイル、小道具など、キャラクターを再現するための努力は一切惜しみません。

本家の『アイドルマスター』にも、そんなこだわりを持つ若林直美さんという人がいたのを思い出します。満天のサイリウムの中で「きらり、アニサマでハピハピしたいにぃ、おにゃーしゃー!」と叫ぶ彼女は今まで見たことがないほど輝いていました。

彼女たちはアイドルではありません。

たとえばテレビの世界で、本物のアイドルのように輝くことはないと思います。でも、客席にプロデューサーたちがいるステージでスポットライトを浴びるその時だけ、彼女たちは本物以上に本物なアイドルに変わる、シンデレラの魔法がかかるのです。

●μ’s(『ラブライブ!』)

 

©Animelo Summer Live 2013/MAGES.
  

μ’sのステージを見ると、いつも泣きたくなります。

9人による一糸乱れぬフォーメーションと完成度の高いダンス。見る人が見れば、それがキャラクターソングのライブの常識からはかけ離れたレベルであることはすぐにわかると思います。どれぐらいの汗と涙を流せば、ダンサーではない彼女たちがあれだけのパフォーマンスができるのか。そこから受ける感銘は、少しだけ準備の裏側を垣間見るようになってからより強くなりました。今の彼女たちは人気声優であり、膨大なレッスン時間を捻出するのは簡単なことではありません。その努力を支えるのは今までステージに積み上げてきたものへのプライドと、会場で待つファンに対する想いだけです。