だから、μ’sはフェスに強いんです。
スクリーンにキャラクターたちの美麗なライブPVを映し出す。ステージで、それとほぼ同じフォーメーション、振りを再現したダンスと生歌を声優自身が見せる。誰が見てもすごさと、その裏にある努力が伝わるんだから、短時間で魅力を伝えるにはうってつけなんですね。ダンスの振り付けや指導を担うチームには、ももいろクローバーZのコレオグラファーとして知られる石川ゆみさんもいます。μ’sの努力を一から見てきたゆみ先生は、ももクロとの共演をどんな風に見ていたんでしょうか。
そんなμ’sですが、昨年のアニサマは「夏色えがおで1,2,Jump!」一曲の披露でした。それだけでも十分にすごさの一端を示したのは流石ですが、やはり風のように現れて、一曲すごいものを見せて、また風のように去っていった…という印象はありました。それだけに、個人的に「μ’sは今年は顔見せ。来年は実績と人気を引っさげて凱旋する」と強気の宣言をしたのですが…またしても、彼女たちはそんな期待を軽々と超えてきました。
思えば、さいたま新都心駅に降り立った時から、異変の種はありました。黒字にピンクの絵柄が目立つμ’sの3rdライブTシャツが…あまりに多すぎる。
ももクロのカラフルなシャツや法被ほどぱっと目立ちはしませんが、よく見れば右も左もラブライバーなんです。ブシロードライブや去年のアニサマ、電撃ミュージックライブなど、ライブを重ねるたびにμ’sへの期待感が高まっているのは感じていましたが、今年のアニサマでTVアニメのOP「僕らは今のなかで」が流れた瞬間の空気のうねりのようなものは、今までの比でありませんでした。
μ’sの9人は、メインステージのてっぺんから「僕らのLIVE 君とのLIFE」の衣装で登場。最初は二年生、一年生、三年生のチームに分かれてのダンスがスクリーンのキャラクターたちとピッタリ重なると、やはり驚きの声が上がります。
ダンスに眼が行きがちですが、めまぐるしく入れ替わる9人のフォーメーションもμ’sの肝。いつもステージを小さく感じさせるほどの彼女たちだけに、SSAの大ステージでは水を得た魚のようです。
MCでは久保さんの「誰かタスケテー」に観客が「チョット待ッテテー」と返す定番の(知らない人にはよくわからない)コール&レスポンスが、さいたまスーパーアリーナという場でもバシっと決まります。
思えば南條さんの「かしこいかわいい!\エリーチカ!!/」や徳井さんの「にっこにっこにー!」に代表される各人の定番挨拶が定着したのもこの一年の成果で、今まで迷走気味だった内田さんの挨拶はアニサマのこの日「ことりのおやつにしちゃうぞ(ハート)」に落ち着いたようです。
2曲めの「START:DASH!!」は、アニメの物語の中では観客0人で行われた「ファーストライブ」で歌われた、μ’sのもうひとつの始まりの曲です。最初は3人でスタートしたμ’sが会場を満員にすることを誓い、やがて9人のメンバーを揃えて、会場を超満員にする。その物語は、注目度が高くはなかった頃から努力を続け、ついにはさいたまスーパーアリーナのステージに立った演じ手としての彼女たちに重なるようです。
この日のライブ開始直後のアーティスト名読み上げ、そしてステージ中の盛り上がり。いずれをとっても、μ’sを迎えたのはこの日一番と言ってもいい、悲鳴のような大歓声でした。それが、彼女たちの3年間に対する客席からの答なのだと思います。
●ミルキィホームズ
アニサマ4回目の出場のミルキィホームズはアイドル…ではなく探偵ユニットですが、実はこの日、一番ももいろクローバーZとの共演を意識していたのは彼女たちだと思います。以前、もっといいライブを、いいステージを作るために、ミルキィの四人が集まって見ていたのが、ももクロのライブDVDでした。勉強のためにももクロちゃんのステージを直接見たいと話していたこともありました。
昨年のミルキィ武道館ライブではミュージカル的なドラマ仕立てのパートがあって、上空を舞うフライングのような意欲的な試みもありました。今年の新年ライブでも「歌だけではない楽しさ」の提供は意識されていて、そうしたエンターテイメント路線の先にある理想のひとつがももいろクローバーZというエンターテイナー集団なのだと思います。4人はメインステージのてっぺんから、おなじみの探偵服で登場。常連だけあって会場全体が歓迎している感じというか、アニサマなのにホーム感があるのはミルキィ特有の空気感かもしれません。