放課後ライブハウス

――ところで、いちばん好きだった科目はなんでしたか?

N「わたしはやっぱり音楽かな。ジモリって合唱にすごく力を入れていて、音楽の授業は歌しかないんです。一年を通していろんな歌を歌うんですが、学期末や年度末の行事で、合唱をする機会があるので、それに向けてみんなでがんばって練習するのが楽しかったです」

――毎年12月に音楽祭があるんですよね。

N「そうです。それ以外の科目も、なにかに向かって練習する感覚で授業を受けていましたね。そのなにかっていうのが、音楽祭だったり、学習発表会だったり。一般の学校だと、それがテストなのかもしれないですけど」

――馨さんは一番好きな科目は?

K「……」

――…放課後ですか?

K「そうですね(笑)、自分だけじゃないと思うんですけど、大勢がひとつのものに向かおうとすると、なんかそわそわしちゃうんですよね。あまのじゃくとも言いますが、それでもいられる学校だったのでよかったですが」

――たしかに、普通の学校だったら、積極的にやっている子たちからなにか言われそうですよね。
高校もそんな感じだったんですか?

K「そうですね」

――それでも卒業はできるんでしょうか。

K「ジモリって、高校卒業に苦労する人が多いんですよ。出席日数と、課題を提出しないといけなくて。でも僕は、けっこう要領がいいというか、要領のいい奴と友達で、高校三年の初めにはもう卒業できる見込みがついてましたね」

N「そんな人いたの?(笑)」

K「野々歩や姉は、先生と、人としてのいいつながりがあるタイプだったと思うんですが」

N「わたしは行事とかも積極的に参加する方でしたね」

K「僕はちがって、えーと」

N「スケボーばっかりしてたんでしょ(笑) あとバンド」

K「そうそう」

――バンドは校内でしていたんですか?

N「そうです。放課後のライブが盛んで、大きめの教室で、ちょっとした照明や音響も組んで、今日はアコースティックの日とか、日によってプログラムがちがって、エントリーした人が順番に演奏するんです」

――それは学校行事ではなく、生徒による自主発生的な活動なんですか?

N「そうです」

――なるほど、行事には外れちゃうような子たちが中心になって、こっちの方がおもしろい、みたいなノリだったのでしょうか。

K「まさにそうですね」

N「でも、いわゆるバンドっぽい子たちだけがやっていたわけじゃなくて、一見おとなしそうな子たちもかかわっていたり、層は幅広かったです。照明や音響のほかに、チラシも手作りしたり、みんなで写真を撮ったり。ジャンルも、ヒップホップもあれば、ジャズもあったり、たまにクラシックの子もいましたね」

――いろんな役割の人がいたんですね!

N「それに力を入れるあまり、授業中も一応教室にはいるけど、教室の後ろでずっとベースを弾いていたりする同級生とかいましたね(笑)」

――ちなみに、馨さんが卒業後に加入されるSAKEROCKの萌芽みたいなものは、在学中にすでにあったのでしょうか。

K「在学中は、音楽でからんだことのあるのは星野源くんだけで、それもすごく自分たちが中心になっていたわけではなかったですね。源くんとハマケンは、コントライブとかお芝居もやっていましたよ」