カツサンドを飲みながら生ビールをグビリ!

【ランチョン】ビールもいっしょだと数倍おいしくなるカツサンド

この日も客のほぼ全員がビールを注文していた。「ナポリタン」(1100円)といっしょに生ビールを頼む客もいた。

こちらも負けずにビールをオーダー。

カツサンドを食べながらビールをやることにしたのだ。一般的にカツサンドはサンドイッチ用の薄い食パンを使う店が多い。

たとえば、『とんかつまい泉』のカツサンド。

私は空港などでも販売しているまい泉のカツサンドが大好物なのだが、とんかつとほぼ同じ厚みのパンを使っている。

【ランチョン】食パンからしてボリューミーなカツサンド

ところが、ランチョンの「カツサンド」(1600円)は、「これは5枚切りではないか」と目を疑いたくなるぐらい分厚いパンをトーストしたものを使っている。

そこに揚げたてのポークカツとキャベツがはさんであり、ソースもやや多めにかかっていて、見るからにうまそうだ。

しかも耳を落としていないのがいい。パンの耳には耳特有の食感と味わいがあり、切り落とすのはもったいない。

【ランチョン】こんなに分厚いパンを使ったカツサンドは見たことがない。喰わずに死ねるか

これをむんずとつかみ、親の仇のごとく齧っていく。

ドボドボのソースがかかった衣が肉からはがれる瞬間の、ツルンという歯ごたえが堪えられない。キャベツもサクサクで、いい演技をしているではないか。

ランチョン

分厚いパンも心地よい。ポークカツに負けない歯ごたえ。食感も齧る際に発する音も豊かこの上ない。

カラシが塗ってあるらしく、爽やかな辛味もよい。もっとカラシが欲しい人のために、小瓶に入ったカラシを届けてくれる。

この風味豊かなカツサンドをかじりながら、鈴木さんが注いでくれたビールを飲む。

サクサク。ガリガリ。グビグビ。

口になかに広がった甘いソースを味をビールで洗い流し、またカツサンドをひと齧り。

口のなかは大騒ぎ。まさに至福のとき。

まい泉のカツサンドを機内持ち込みする機会が多いのだが、ビールといっしょに食した経験がない。

しかもいま目の前にあるカツサンドは作りたて。

ラードの芳しい香りが鼻孔をくすぐるメンチカツ

【ランチョン】 この店のメンチカツは盛り付けからしてうまそうではないか

最後にもう一品。「自慢メンチカツ」(1200円)である。

テーブルにおかれた瞬間、ラードの芳ばしい香りがムンムンと広がった。

聞けばラードで揚げているという。私はラードの香りが大好きなのだ。

コロッケもメンチカツも揚げ物はラードで揚げるべきだと思ってきた。

昨今、肉屋もレストランもサラダ油を使う店が増えているせいか、せっかくの揚げたての香りが愉しめないばかりか、揚げ物の存在をおとしめている。

この店ではカツサンドのポークカツもラードで揚げているはず。

ソースなどの香りでマスキングされていたのか、ラードの香りにまったく気づかなかった。

カツサンドに申し訳ないことをした。カツサンドよ、ごめん。

【ランチョン】 ラードの香りが鼻孔をくすぐるメンチカツ

ナイフを入れたときのサクサクという音までおいしい。

レストランも肉屋もメンチカツは豚ひき肉で作る店が多いが、ランチョンでは合い挽きを使っているのかもしれない。

しかも玉ねぎを使っていないため、肉そのものを味わいがガツンと襲ってきた。

マカロニサラダとキャベツをときどきつまみながらメンチカツを完食した。

【ランチョン】メニューには洋食はもちろん、ビールに合うつまみなども掲載されている


メニューには、昭和の少年少女が大好きな「オムライス」(1100円)や、「エビマカロニグラタン」(1300円)も載っている。

コロッケ好きとしては、次回は「エビクリームコロッケ」(1200円)を頼まなければ。

【ランチョン】明治42(1909)年の創業以来、この場所で営業している


ランチョン

住所/東京都千代田区神田神保町1-6
電話/ 03-3233-0866
営業時間/11:30~21:30(土曜~20:30) 定休日/日曜祝日

東京五輪開催前の3歳の時、亀戸天神の側にあった田久保精肉店のコロッケと出会い、食に目覚める。以来コロッケの買い食いに明け暮れる人生を謳歌。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』、『自家菜園のあるレストラン』、『一流シェフの味を10分で作る! 男の料理』などの他、『笠原将弘のおやつまみ』の企画・構成を担当。