「うまい肉党」の大半がトンカツ好きだ。文句のあるやつはいないよね?
でも、せっかくならラードで揚げた芳ばしい香りのトンカツを食べてほしい。中野の『豚肉専門料理店 とんかつのり(以下、とんかつのり)』ではラードでとんかつを揚げているのだ。
すべて千葉のブランド豚『林SPF』を使用。なぜ?
「うちの豚肉は、トンカツもメンチカツも豚汁もすべて千葉のブランド豚『林SPF』を使っています」とオーナーの岡野泰平さんは胸を張る。
「林SPF」のトンカツならこれまでに何度か食べてきた。舌の記憶によれば、「林SPF」は脂が甘かったはずだ。
でも、なぜ「林SPF」を使おうと思ったのか。
「自分は蒲田に住んでいます。トンカツ屋の激戦区として知られる蒲田で『林SPF』のトンカツを食べ、『林SPF』専門店をやることにしました」
岡野さんは元ミュージシャン。諸般の理由で飲食店を始めようと思い、大好きな「林SPF」を供する豚肉料理専門店を開業するに至った。
いったい「林SPF」のどこがそんなに好きなのか。
「近年脂身が少ない、赤身の豚肉が主流になりつつあります。一方、『林SPF』はいかにおいしい脂をつけるかを考えて飼育しているため脂身が甘く、筋がやわらかいんです」
脂身がうまいロースのトンカツランチは3種類
脂身がうまいロースのトンカツランチは3種類。
「ロースかつランチ(130グラム/1000円、以下すべて税込)、「上ロースかつランチ(200グラム/1500円)」、「特上ロースかつランチ(250グラム/2000円)」だ。せっかくなので「特上ロースかつランチ」を注文した。
塩をしただけの分厚いロース肉に小麦粉、溶き卵、生パン粉を付けたものをラードの海で泳がせる。油の温度は約160℃。
「やや低温で、8分から9分じっくりと揚げます」
ラード100%だと重くなるという理由で、ほかの油も併用する店も多い。ところが、この店はラードのみ。ラードだけで揚げるトンカツは、ラード特有の芳ばしい香りがこたえられない。
揚げたてのロースカツを包丁で切る音もまた美しい。胃袋をロックオンされてしまった。
揚げたての芳しい香りの「特上ロースかつランチ」がテーブルに登場。
「まずは塩で食べてみてください。黒塩、ピンク岩塩、雪塩の3種類を用意してあります」
若い人は好んで塩で食べるそうだ。けれど、東京オリンピック世代(1964年のほうね)は、トンカツにはソースだと心に決めている。しかもソースをドボドボかけないと気がすまないのだ。
「下品だ」と馬鹿にされようが、「育ちが粗野だ」とけなされようが、平気の平左。
「ソースは甘めのものを厳選しました」
特上ロースなので肉厚。しかも「林SPF」は脂身が甘い。それをソースで喰らう。もういうことなし。大満足。