せっかく生まれた縁だけれど

「バレンタインのチョコレートをもらった後だったし、いつも通りだと思っていたら『気を使わなくていいよ』と断られて、驚いただろうなとは思います。

でもこれは、彼女がやってきたことと同じです」

そう口にしたAさんは、彼女の一方的な好意を受け取らないことでプレッシャーから解放され、今は以前と同じように距離を置いて後輩女性と接しているそうです。

「いきなり挨拶をやめられたり声をかけたら無視されたりしてしんどかったのですが、業務については相変わらず真面目にやってくれるので、そこだけうまくいけばいいと割り切っています。

どうすればよかったのかは今もわかりませんが、あんな状態ではどんどん自分が疲れていくだけでした」

後輩女性に好意が芽生えかけていたけれど、それを拒否されては関係が進むはずはなく、真ん中で結ばれない気持ちはいずれ消えていきます。

「僕自身は好きでいられたらそれで満足なんて恋愛はしたことがないので、彼女の気持ちはわからないけれど、一方的に好意を伝えるだけっていうのは相手の気持ちを無視しているのと同じなのですね」

その立場に置かれて初めて知った、好かれる側のプレッシャー。

応えたくてもそれを封じられることの窮屈さは、せっかく生まれた縁をこちらから手放す終わりを迎えます。

「両思いになる可能性をどうして捨てるのかが、僕にはわかりません」と、Aさんは締めくくりました。