2つ目は、「卒業」というシステム。主役校の青学キャストは定期的に卒業、代替わりを繰り返すことで、ある意味では人生のなかでもっとも美しい時期をテニミュに捧げてくれる。だから、千秋楽は一種の卒業式になって、観客は父兄のような気持ちで、旅立つ彼らのセレモニーを涙ながら見守る。
卒業によって「次はどんなキャストがくるのか?」という期待に胸が膨らむ。
3つ目は、公演とは別に行なわれる『Dream Live』(通称ドリライ)。メイクや衣裳はもちろん、キャラクターのまま行なわれるライヴは、ファンにはたまらないお祭り。あくまで「舞台作品」として静かに大人しく座席で座っていなくちゃいけない本公演で溜め込んだ思いを、黄色い声とペンライトに乗せて思い切り表現できる。キャラクター名を大声で叫んで、一緒に歌える。これが、楽しくないはずがない。
真剣に戦った日々をみんなで思い出し、新たな気持ちで次の公演に臨める。そんなドリライのデトックス効果もテニミュが長く愛されてきた要素のひとつだろう。
楽しみ×広がる×濃くなる? 2ndシーズンの挑戦
2003年に始まったテニミュ1stシーズンは、2008年の原作完結をはさんで、2010年5月の『Dream Live 7th』で一旦幕を閉じる。
そして、数ヶ月の充電期間を経て、2010年8月からは2ndシーズンが始動。2011年1月より「青学vs不動峰」公演がスタートし、再び全国大会決勝までを新たな演出で展開している。2ndシーズン終盤のいま振り返る、1stシーズンとの違いとは?
まずは、楽しみ方が多様化したこと。ブログやTwitterの普及で、キャストの生の声が聞けるようになったことに加え、ファンクラブ「TSC」(テニミュ・ サポーターズクラブ)が発足し、「プレミアム・パーティ」と呼ばれるイベントでは公演の裏話が聞け、キャスト同士のナマの関係性が垣間見えるようになった。
新アンコール曲『Jumping up! High touch!』では、運が良ければキャストとハイタッチできるようになり、「春の大運動会2012」(2012年5月)、「テニミュ映画祭」「PV COLLECTION」、「バックステージ映像を集めたファンディスクの発売」などの新企画が次々発表され、握手会つきのCDシングルはオリコンデイリー2位を記録。あくまで公演を中心にしつつ、キャストを身近に感じられる場所が増えていった。
きわめつけが、先日、伊勢丹新宿店に出現した「POP UP SHOP@ TOKYO解放区」だろう。ファッションブランドbeautiful peopleとのコラボパーカや公演写真パネルをはじめとする様々な商品が初日にほとんどソールドアウトになるほどの大盛況。
一目では分からない、でも分かる人には分かるファッション性の高いグッズが売れたことで、中高生やアニメ・漫画好きだけにとどまらないファン層の広がりを改めて感じさせた。
次に、2ndシーズンならではの公演がブラッシュアップされる楽しみがある。2ndシーズン最初の公演「青学vs不動峰」では、1stで卒業したファンが多かったことなどさまざまな理由があり、客席に空席が目立った。2校ドッキングに挑戦した「青学vs聖ルドルフ・山吹」公演、新曲も盛り込んだ「青学vs氷帝」公演など、「何を残し、何を変えるか」という試行錯誤が繰り返されてきたように感じる。
その努力の結晶が、今夏の「全国大会 青学vs氷帝」だ。物語はもちろん楽曲も試合の流れも1stとほとんど同じなのに、見終わったあとの印象がまるで違う。1人1人のキャラの思いにより深く引き込まれ、2時間半ずっと熱が冷めない。これぞ、まさに「2ndシーズン最高傑作」。1stシーズンという「ライバル」に挑み続けてきた2ndシーズンの足跡は、関東大会で敗れた青学にリベンジマッチを挑む、氷帝学園の姿とも重なった。