流星くんだから僕も本気で向かっていけた
――実際に、横浜流星さんが演じる翔吾とボクシングシーンを撮影してみた感想は?
翔吾と大塚にはスパーリングと、試合と、ボクシングシーンが2回あって、スパーリングの方は練習と変わりないというか、ヘッドギアを付けているので顔も殴れますし、殴られますし、結構本気でできるんです。
普段から松浦さんと1日に3、4ラウンドのスパーリングはやっていたので、カメラが回っている1、2分の出来事であれば、その瞬間にすべてを残したいという想いもあって、わりと本気の殴り合いをしました。
けど、試合のシーンはヘッドギアが無くなるので、急に無防備感が出てきて怖かったです。「もし当てたら(横浜の)鼻が折れるな」とか、自分も当てられたら折れるなとか考えてしまって。だから最初の方はかなり身体が硬くなっていたと思います。
いつも伸び伸び打っていたジャブが、伸びきる前に止まっちゃうみたいな。何とかリラックスしなくちゃって焦っていました。さらに、これが映画館の大きなスクリーンに映し出されるんだなとか、余計な想像がどんどん頭によぎってしまって。
――考えなくていいことまで。
ホント、最初はヤバかったです(苦笑)。ただそれも、徐々にカットを重ねてく中で消えて、後半はもう、カメラが回っていることも忘れるくらいに集中していました。僕と流星くんとの阿吽の呼吸のような、見えない会話が結構長く続いていたかと思います。
それから、撮影方法にも気を遣ってくださって、先にリングの上のシーンからまとめて撮ってくださったんです。それもすごく助かりました。おかげで最後まで集中力を途切れさせることなくできました。
――ボクシングシーンはお互いに対する信頼がないとできないと思いますが、そのお相手の横浜さんはどんな存在でしたか。
流星くんは「何でも来い!」っていう感じがあるんです。僕のパンチなんか受けたって死なんぞっていう覇気みたいなものを常に出してくれていました。最初は力が入っていたものの、最終的に伸び伸びと試合ができたのは流星くんのおかげだと思います。
なんて言うんでしょうね、流星くんも(中西利男役の)窪田(正孝)くんも基本的な運動神経が違うというか、持ち合わせた筋量が違うというか、馬並みというか(笑)。僕は動きもそうだし、猿っぽいけど、2人はもう筋肉の色や質から違います。
本来ならば、僕のチャンピオン役の立場が主演の流星くんをリラックスさせてあげて、いくらでも打ってきていいよっていうスタンスでいなくちゃいけないのに、逆になっていました(苦笑)。
ただそういう流星くんだから僕も本気で向かっていけたし、結果的に画で観ると、パワーバランス的には大塚の方が強そうに見えてもいたので、もしかしたら流星くんはそこまで計算して、そういう感じを出してくれていたのかもしれません。