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――出演を決めた理由を教えてください。
孤独のなかで生きてきた冷徹な男が、若い女性と出会って初めて愛を感じたのに、彼女は自分が弟のように可愛がっていた男性を好きになり、裏切られて堕ちていくという設定を読んだ時、これまでになく激しい感情の起伏を表現できて面白そうだと思いました。演出家さんと脚本家さんに対する信頼もありました。
――裏社会で生きる荒々しい姿、愛に一途なところ、母親との確執、裏切られて爆発する姿……本作で実に様々な姿を表現していますが、感情表現がもっとも難しかったのはどんなシーンでしたか?
脚本家さんが最初におっしゃった言葉が「愛はどこまで大きな花を咲かせ、どこまで色褪せることができるだろう。それをドラマで描いてみたい」というものでした。愛にはふたつの側面があります。
人を愛すると、その人のことをずっと考えて、会いたくなって、恋しくなる。反面、愛することによって人間の暗い面も浮き彫りにもなるものです。裏切り、独占欲、誤解などが生まれてくるからです。
そういった恋愛の表裏をいかに表現していくかというのが、脚本家さんのそもそもの意図でした。僕はこれまで、そのような愛の裏と表を演じたことがなかったので、テサンを通じてぜひ表現してみたいと思いました。
難しかったことと言えば、テサンは、少年時代に母親に捨てられて、孤児のように育ち、氷のような心で生きてきた男。そんな男が30代半ばを過ぎてひとりの女性と出会って、女性との甘い恋愛によって凍りついた心を溶かしていく。
女性と出会う前はヤミ金業者で借金の取り立てをするようなチンピラだった、まるでシベリアタイガーのような男が、愛を知ってピュアな羊のようになる(笑)。そこの感覚ですね。