7年ぶりのヤギ肉スープの店も健在

牛モツスープの隣には、ヤギ肉を扱う店がある。

以前に訪れたときは高齢のおじいさんが店を切り盛りしていたが、今回、7年ぶりに訪問してみると、以前と同じ懐かしい顔があってホッとする。

ヤギのような白いフサフサ眉毛のおじいさんは、テイクアウトを注文した客にスープを用意している。

久々の台湾一周の旅では、どの町でもたくましく働く高齢者の姿を見た。元気に声を張り上げる人もいれば、腰にコルセットを巻きながら、なんとか立ち仕事をこなす人もいる。日本でもそうだが、台湾でも後継者がいない店は高齢者ががんばっている。

デザートは露店で卵を落としたホット杏仁茶

市場から近い大きなロータリーでは、大好きな杏仁茶の店が営業していた。店といっても、ご主人がロータリーの脇に陣取って、小さな椅子を並べ、杏仁茶を売っているだけ。

大きな油條(揚げパン風)を、卵を溶かした熱々の杏仁茶に浸して食べると、それだけでお腹がいっぱいになってしまう。

聞けば、彼は四代目の後継者で、初代の杏仁茶売りは80年前にこのロータリーで商売を始めたそうだ。

売っているのは杏仁茶と油條だけだが、長年のなじみ客のために、今も同じ業態を続けている。「店舗なんか構えたら、客が来なくなる」と、謙虚な四代目は言う。

【台湾食べ歩きの旅 #19】杏仁茶(25元)に10元をプラスすると、卵を落としてくれる。杏仁茶は熱々なので、生の黄身を落としたら素早く混ぜると飲みやすい

牛モツスープの朝ごはんと杏仁茶を堪能し、目指すは阿里山。再び自転車に乗り、阿里山鉄路の発着ホームがある嘉義駅へ向かう。今日も平地は暑くなりそうだ。

(つづく)

フォトギャラリー【台湾】阿里山号の鉄道の旅路を写真でさらに見る
  • 【台湾食べ歩きの旅 #19】奮起湖では駅弁が買える。林業が盛んだった日本時代、上下車両の交換や給水が行われていた奮起湖は作業員の休息所でもあったため、ここで弁当が売られたという
  • 【台湾食べ歩きの旅 #19】 阿里山森林鉄道の主線は奮起湖が終点。ちょっとした観光地で、阿里山茶を楽しめる茶屋や土産屋が並んでいる
  • 【台湾食べ歩きの旅 #19】独立山をらせん状に登っていくと、車窓から見える街が徐々に小さくなり、眼下には山々が広がる
  • 【台湾食べ歩きの旅 #19】残念ながら阿里山号の窓は汚れていて、顔を近づけないと外がよく見えない。これではせっかくの絶景も半分しか楽しめないが、文句を言うのは日本人くらいか
  • 【台湾食べ歩きの旅 #19】森林鉄道は嘉義駅から出発してしばらくは平地を走る。のどかな田園風景や民家の脇を通って山へ向かう

みつせ のりこ:90年代から台湾と関わり、台北で留学や就職、結婚や子育ても経験。現在は執筆や通訳、取材コーディネートの仕事で日本と台湾を往復している。著書に『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾縦断! 人情食堂と美景の旅』『台湾一周!!途中下車、美味しい旅』など。株式会社キーワード所属。