日本とウクライナの文化交流に多大な貢献をした、高尾美智子さん。息子は、ウクライナでトップの名門国立劇場、ウクライナ国立バレエ芸術監督の寺田宜弘氏。受け継がれる絆。来日公演のうち京都の2公演、12/23(火)ウクライナ国立バレエ「雪の女王」と1/15(木)ウクライナ国立歌劇場管弦楽団「第九＆運命」は、美智子先生を偲んだ追悼公演に決定。
ウクライナと日本のバレエ教育の架け橋として、50年にわたり両国の国際交流を深めてきた寺田バレエ・アートスクール校長、高尾美智子さん(享年86)(＝芸術名、本名：寺田正子さん)が11月9日に逝去されました。2025年12月～2026年1月に日本公演を予定していたウクライナ国立歌劇場と、来日公演を主催する光藍社は、京都で予定されている公演を、高尾美智子先生の功績を讃えた追悼公演とすることに決定いたしました。京都公演はキーウ市の姉妹都市である京都市が後援しています。
■ウクライナとの国際交流に貢献した高尾美智子氏
京都市には寺田バレエ・アートスクール本校があり、ウクライナから優れたダンサーや教師を招いて交流を重ねています。高尾美智子先生は、長年にわたり後進を育成し、日本国内外に影響を与え続けた、日本とウクライナを民間レベルで結び付けた先駆者的存在でもあります。
1960年に夫の故寺田博保氏と共に寺田バレエ・アートスクールを創設。1971年に京都市とキーウ市が姉妹都市提携を行った後、1975年まだ国際交流が容易ではない時代に、キーウ国立バレエ学校との姉妹校締結を実現。世界レベルの伝統的なクラシックバレエの技法と教授法を日本に導入しただけではなく、芸術教育として日本の伝統である茶道なども授業に取り入れ、国際的な感覚を身につけた人間教育を目指し、ウクライナへの訪問研修ほか、多くの生徒をバレエの本場ウクライナに送り出してきました。
2009年にはウクライナとの文化振興に寄与した功績を認められ、ウクライナよりプリンセス・オリガ勲章が授与されています。また息子の寺田宜弘氏は、11歳の時に第１回留学生としてキーウ国立バレエ学校に入学し、ウクライナ国立バレエでの活躍を経て、外国人としては異例のキーウ国立バレエ学校の芸術監督に就任。2022年にはウクライナ国立歌劇場のバレエ芸術監督に就任して、母である高尾美智子さんの志しと共に、ウクライナと日本の文化交流に貢献することとなりました。
美智子先生は本年4月に大阪・関西万博に参加し、寺田バレエ・アートスクールの生徒を率いて、自身が監修した作品「さくらさくら」を披露。日本のバレエ芸術を世界に拡げる活動を行いました。また、本年姉妹校締結50周年を迎え、8月にキーウ国立バレエカレッジの学生を招いての記念公演を京都で開催しました。このようにウクライナとの長期にわたる国際交流を継続して、その功績と温かい人柄により、多くの舞踊関係者及び京都の文化に関わる方々から深く敬愛されていました。
寺田博保氏､G.キリーロワさん(キーウ国立バレエ学校芸術監督)､高尾美智子さん(1975年) 
R.クリャービン氏(ウクライナ国立バレエ芸術監督)、Ｇ.キリーロワさん､高尾美智子さん､I.コロチェンコさん(キーウ国立バレエ学校校長)､寺田博保氏(1975年)
■今回の特別公演について
ウクライナ国立歌劇場は1972年の初来日以来、これまでにバレエ、オペラ、オーケストラ公演を国内で600回以上行い、延べ60万人以上の日本の観客がこの劇場の公演に親しんできました。特にウクライナ国立バレエは、ほぼ毎年全国で公演を行っていますが、来日時には必ず京都公演を行うなど、劇場と京都は特別な関係にあります。
一方で、京都市は1971年にキーウと姉妹都市提携を結んで以来、芸術文化・教育を通じた様々な交流事業を行い、ウクライナとの相互理解を深めてきました。
この度、高尾美智子さんの逝去にあたり、同氏のウクライナとの文化交流及びウクライナ国立歌劇場の活動に貢献した功績を讃えて、ウクライナ国立歌劇場および来日公演を主催する光藍社は、京都公演を追悼の意味を込めた特別公演として開催することにいたしました。
特別公演では、ウクライナ国立バレエのオリジナル作品「雪の女王」と、ウクライナ国立歌劇場管弦楽団・合唱団の「第九・運命」を予定しています。「雪の女王」で主演するカテリーナ・ミクルーハは、バレエ学校時代に京都を訪れて寺田バレエ・アートスクールの公演にも参加し、子供時代から高尾美智子先生に可愛がられたバレリーナです。今回が日本で「雪の女王」初主演となり、特別公演に華を添えます。ベートーヴェンの交響曲「第九」と「運命」には、ウクライナ国立歌劇場の合唱団も登場します。世界中で平和の象徴として演奏されている「第九」をオール・ウクライナのメンバーで奏でる、その魂の響きは哀悼に相応しく、心の琴線に触れる演奏になることでしょう。
京都とキーウの文化交流の歴史を支え続けた高尾美智子先生への敬意と感謝を持ち、彼女の志でもあった芸術が紡ぐ平和への希望となることを願い、公演を開催いたします。
https://www.koransha.com/contents/7616/
関連コラム：高尾美智子先生の半生<バレエに生涯を捧げ、日本とウクライナの文化交流に貢献>
ウクライナ国立バレエ「雪の女王」
ウクライナ国立歌劇場管弦楽団・合唱団「第九＆運命」
◇追悼公演について◇
【公演１】ウクライナ国立バレエ(旧キエフ・バレエ)「雪の女王」<京都公演>
公演日時：2025年12月23日(火)18:30 会場：ロームシアター京都 メインホール
出演；K.ミクルーハ、O.オメリチェンコ、A.シェフチェンコ、D.パスチューク、K.チュピナほか
指揮：ミコラ・ジャジューラ 管弦楽：ウクライナ国立歌劇場管弦楽団
主催：光藍社､otonowa 後援：京都市
料金：SS席21,000円～D席8,000円
公演詳細：https://www.koransha.com/ballet/ukraine_ballet/ <こうらんしゃで検索>
お問合せ：光藍社チケットセンター 050-3776-6184(12～15時/土日祝休み)
芸術の古都キーウから、歴史と伝統を受け継ぐ名門ウクライナ国立バレエが来日。アンデルセンの童話原作を基にした、劇場のオリジナル作品「雪の女王」を上演。美しく幻想的な世界が繰り広げられる
【公演２】ウクライナ国立歌劇場管弦楽団・合唱団「第九＆運命」<京都公演>
公演日時：2026年1月15日(木)19:00 会場：京都コンサートホール 大ホール
指揮：ミコラ・ジャジューラ 管弦楽：ウクライナ国立歌劇場管弦楽団 合唱：ウクライナ国立歌劇場合唱団 ソプラノ： L.グレヴツォヴァ メゾ・ソプラノ：A.シヴァチカ テノール：D.クジミン バス：S.コヴニール
主催：otonowa､光藍社 共催：α-STATION エフエム京都、公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団 後援：文化庁､京都市
料金：S席14,000円～B席8,000円
公演詳細：https://www.koransha.com/orch_chamber/daiku/ <こうらんしゃで検索>
お問合せ：光藍社チケットセンター 050-3776-6184(12～15時/土日祝休み)
キーウの名門歌劇場オーケストラが奏でる重厚で躍動感ある響き、魂を揺さぶる合唱団の歌声で
ベートーヴェン不朽の名作に息吹を与える。明日への希望、音楽の力に圧倒される「第九＆運命」
高尾美智子先生のドキュメンタリー番組が放送されます。
「MICHIKO ～戦争とたたかうバレリーナ」
(C)m.ebara
本放送：【NHK BS】1/23（金）22:45～23:44
再放送：【NHK BS】1/27（火）11:00～11:59
追悼～高尾美智子先生を偲んで
（映像ジャーナリスト 榎原美樹）
本年11月９日、高尾美智子先生が永遠の眠りにつかれました。
バレエ芸術を通じた教育とウクライナとの国際親善のために、86年の生涯のすべてを捧げた偉大な女性でした。昭和14年大阪に生まれた美智子先生は、戦時中空襲の中を逃げ惑い、お父様を出征直後に亡くされた辛い経験から「戦争は人を苦しめるだけ」という強い信条をお持ちでした。その少女美智子に希望を与えたのは、バレエの光り輝く世界でした。京都にバレエスクールを設立し、生徒たちには「ほんまもん」のバレエを習得させたいと、当時まだソ連の一部だったウクライナの国立バレエ学校と姉妹校提携を結んで研修旅行へ連れて行き、またウクライナの学生たちを京都へ招いて合同の公演を行うという交流を50年にわたって続けました。また、11歳でバレエ留学に送り出した次男宜弘さんは、いまやウクライナ国立バレエの芸術監督として、空襲警報鳴りやまぬ中、ダンサーたちを励ましながら新しい作品に挑戦し続けています。
バレエと子どもたちを愛し、ウクライナを愛した美智子先生。きっと天国から世界の平和を祈り、舞台のダンサーたちに惜しみない拍手を送り続けてくれることでしょう。ご冥福を心よりお祈りいたします。
◇来日公演概要◇
ウクライナ国立バレエ(旧キエフ・バレエ)
■公演日程
2025年12月6日(土)～2026年1月3日(土)
■予定演目
「雪の女王」「ジゼル」「ドン・キホーテ」
■会場
東京文化会館(上野)､東京国際フォーラムA(有楽町)､神戸国際会館､ ほか
東京､神奈川､埼玉､千葉､群馬､岩手､宮城､秋田､茨城､静岡､山梨､長野､京都､兵庫 全18公演予定
■その他
「ジゼル」「ドン・キホーテ」：未就学児入場不可
「雪の女王」：4歳以上入場可
「第九＆運命」ウクライナ国立歌劇場管弦楽団・合唱団
■公演日程
2025年12月28日(火)～30日(日)､2026年1月15日(木)
■公演会場
東京オペラシティ コンサートホール、横浜みなとみらいホール、京都コンサートホール
■予定曲目
ベートーヴェン：交響曲第5番「運命」、交響曲第９番「合唱付き」
■その他
※未就学児入場不可
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