HSCってどんな子ども?

では、具体的にHSCの子どもがどんなことが大事で、どんなことを嫌がるのでしょうか。
koko kakuさんにお話を伺いました。

――たけるくんの赤ちゃんの時の様子や、koko kakuさんが、たけるくんが他の子とは少しちがうようだと気づき始めた頃のことを教えてください。

koko kaku(以下k)「赤ちゃんの頃は、他の人の抱っこを嫌がるとか、抱っこしていておろすと泣き出すとか、そういったことくらいしか記憶はないんですね。

1歳過ぎた頃、歩き始めた息子が転びそうになって、私が思わず“あっ!”と声を出してしまったことがあります。その時の私の反応をすごく嫌がることがあったのですが、今思うともしかしたらHSCゆえの反応だったのかもしれません」

――HSCは驚くことが苦手なようですが、そういうことでしょうか。

k「驚くというか、干渉や口出しされるのを嫌がっている、と感じました。その時は、この子は意志が強いんだな、くらいに思っていたのですが、3歳くらいになって、初めて会う人や初めて行く場所を嫌がるようになってきました。人に話しかけられても、あいさつをしないんです。話しかけられること自体を好まないと感じました。

――3歳くらいだと、知らない人にも手を振り返したりする子もいますよね。

k「私も、どうしてあいさつしないんだろう、と思っていたのですが、よく見ていると、人によって反応が違うことに気づいたんです。自分を子ども扱いするような人には絶対にしないんですね」

――反対に、たけるくんをちゃんと個として尊重してみてくれる人にはあいさつをするんですか?

k「そうですね。安心できる人でないとあいさつしませんでした。すごく観察しているんだなと思いましたね。そういった物事の本質的な部分を見抜くような洞察力は、年齢が上がるにつれ、強くなっていきました」

――他にはどんなことがありましたか?

k「公園などで、自分がやりたくないと思った遊具は絶対にやりませんでした。他の子たちの輪にも絶対入らなくて、周りに人がいると、私から離れないんです」

――スカートから離れない?

k「いや、抱っこでしたね、もうずっと抱っこ(笑)。無理強いはしませんでした」

――あいさつのこともそうですが、もし普通のママだったら、ちゃんとあいさつしなさい、とか、他の子と遊びなさい、とか人目を気にして言ってしまいそうだと思うのですが。

k「どうしてだろう、とは思うんですが、うちの場合、夫がそもそもHSP(人一倍敏感な人)なので、息子の感覚がわかってしまうんですね。私があれっと思うこともその都度、説明してくれるので、あまり悩まなかったんですよね。

今、HSCのお子さんを持つママたちとコミュニケーションして、皆さんが悩んでらっしゃることを知り、逆に皆さんの意見や気持ちから学ばせてもらっている部分がけっこうあります」

――皆さん、どういったことで悩んでいるのでしょうか。

k「たとえば、健康診断などの場でつらい思いをする方は多いようです。HSCの子どもは、人から触れられるのが苦手な子が多く、そういう場所で怖がって大泣きする子もいますし、子どもによっては言葉を話さなくなるので、それでチェックされたりとか」

――3歳児健診とか、そういう場のことですよね。ああいう健診って、子どもにしてみたら、医師とはいえ知らない人から体を触られたり、いろいろ聞かれたりして、しかも流れ作業的にどんどん先に送られますし。

k「そうなんです。それでお医者さんには、育児や子どもさん自身のことを否定するようなことを言われたりするらしいんですね。

お医者さんでHSCのことを知っている方は、まだほとんどいないのではないかと思います。医学用語ではないので無理もないのですが。幼稚園・保育園の先生も知らない人がほとんどだと聞きます」

「どうしてぼくはみんなとちがうの?」

k「子育て支援センターのようなところに、たまに行くことがあったのですが、どうしてもなじむのに時間がかかるので、やっと場所に慣れてきた頃に終わりの時間になってしまうんですね。

それで、たけるは泣き出してしまう。その後に、たけるが、“どうしてみんなはニコニコしているのに、僕だけ泣いちゃうのかな”って悲しそうな顔で言ったんです」

――何歳くらいの時のことですか?

k「4歳くらいだったと思います。幼いながらに、人と自分の違いに気づいて、なんでだろうって思うんだー、と胸がきゅーっとしてしまって」

――切ないですね、それは。自分を責めてしまっている?

k「そうなんです。だから、泣きたい時に泣けないと心がこわれてしまうんだから、泣けるってことはすごいことなんだよ、泣かないと自分の気持ちってわからないんだからって伝えました。

ただ人前で大きな声で泣くというのは、本人にとってもどうしていいかわからなくなってしまうことだと思うので、それからは泣きそうになったら、ぱっと人気のないところに移動するようにしていました」

――最初の子育てで、それができるのはすばらしいです。もしたけるくんが、みんなとちがう自分を否定してしまっていたら、大人になっても自分のことが好きになれないことで悩んでしまったのではないでしょうか。自己肯定感の低さは、生きづらさにつながりますよね。