k「はい。私は周囲に適応することが当たり前で、特に疑問を持たずに育ってきました。それが大人にかわいがられるスキルだったし、社会人としての常識と思ってきて、それを子どもに教えるのがしつけだと思っていたんですが、夫は違ったんですね。
先にも言いましたが、彼自身もHSPで、精神科医として家で開業していたので、私も、たけるが生まれる前から日常的に心に傷を負った人と接していたんです」
――koko kakuさん自身も心理カウンセラーでいらっしゃるんですよね。
k「はい、産後に資格を取りました。夫の影響で、アダルトチルドレンの本や、毒親の本や、それから他にも、こんな子育てをしたいな、と思えるような本にたくさん出会っていました」
――どういった本ですか?
k「長谷川博一さんの『お母さんはしつけをしないで 』ですとか、大河原美以さんの『ちゃんと泣ける子に育てよう 親には子どもの感情を育てる義務がある』などです。
特に『ちゃんと泣ける子に育てよう』は、私もずっと泣くことは恥ずかしいことだと思っていたので、本当に読んでよかったと思える本でした」
――それはたけるくんが生まれる前のことなんですよね。すごいタイミングというか、まるでたけるくんの子育てをするためにめぐりあっていたような感じですね。
私自身もそうですが、子どもが泣くのが苦手で、泣くと、なぜ泣くのかと考える前に泣き止んでほしいと思ってしまうのですが、HSCが5人に1人いると聞くと、どんな子にでもその気はあるのではと思いました。
k「はい、特に日本人は多いのではないかと言われています」
――そうですよね、日本の学校は決まりなども多いですし、みんなと同じを求められる場面でストレスを感じる子どもは多いのではないかと想像します。
協調性よりも大切なこと
koko kakuさんのお話を聞いて、筆者は自分のなかの価値観が揺らぐような感覚を覚えました。
内気だとか、恥ずかしがり屋な性格といった言葉は、決してほめ言葉としては使われていない言葉だと思っていましたが、お話をうかがった今、思うことは、内気で、恥ずかしがり屋で、あるいは感じやすいことは、個性のひとつにすぎないのかもしれない、ということです。
子どもがHSCかどうかはともかく、いわゆる“内気”な子どもに対して世のママが感じた不安を言語化するなら、協調性・社会性のない子どもに育ってしまったらどうしよう、ということなのだと思います。
筆者もインタビューの前まではそう思っていました。ですが、なぜ協調性・社会性がないと、困るのでしょうか。人間は社会的な生き物であり、他人との共生がうまくいかければ、成長し生きていけないという思い込みがあるからかもしれません。
今の時代、多様性や包括性を重んじる社会を目指す動きは始まっていますが、「みんなちがって、みんないい」と言うのは簡単です。
「みんなとちがう」いわゆる少数派の人たちの中にHSCが含まれるのであれば、大切なのは、多様な社会の実現のために、少数派の人たちについての知識や理解を持つ人が増えることなのではないでしょうか。
このことは、誰にとっても他人事でなく、自分のこととして考えるべき問題だと思います。なぜなら、あなたの子どもが少数派の可能性もじゅうぶんにあるのですから。
そして、もしも子どもの中に眠るとても繊細な感覚に、親として気づくことができたら、それは素敵なことなのではないでしょうか。
後編では koko kakuさんに、たけるくんが幼稚園や小学校には行かない選択をするまでのお話と現在の様子についてお聞きしたお話をお送りします。
広がるHSCの輪
koko kakuさんは、本の出版資金づくりのためのクラウドファンディングにも挑戦しています。すでに目標金額に達していますが、それだけ興味のある人が多いということなのですね。
もし一人で悩んでいる人がいたら、ぜひkoko kakuさんたちの活動に関わってみては、いかがでしょうか。
【取材協力】koko kaku
「HSC子育てラボ」代表 心理カウンセラー。 9歳になる子どもと精神科医の夫はともに敏感・繊細気質(HSC/HSP)。
2018年3月に「HSC子育てラボ」を立ち上げ、HSCを育てるお母さんのサポートや、HSCの魅力や個性、才能がありのまま発揮されるよう、HSC概念の共有・拡散を目標に、夫婦で情報発信、勉強会などの活動をしている。 夫との共著書に『ママ、怒らないで。不機嫌なしつけの連鎖がおよぼす病』、 小冊子絵本『敏感な子の守りかた絵本』がある。