血液不足は「産後うつ」を招く!?
ーー他に、「産後うつ」の問題も、血液が関係していると聞きましたが…
(すみ先生)産後うつは、産前からのケア不足からくるんですよね。
特に血液が不足しているタイプの人は、産後にうつになりやすいんです。薬膳で「血」というのが、精神の安定をはかっているので、血液が足りなくなると、ものすごい精神不安定になるんですね。出産では、まず赤ちゃんを作る時点で血が不足する、出産で血を消耗して、授乳で血を消耗するので、血が消耗する条件が全部揃っちゃうんです。
だから、赤ちゃんを産むだけじゃなくって、授かった後、それから無事に出産していい赤ちゃんを育てて自分もいい状態でいるためには、血液を補うということが、産前から産後までに、一貫してすっごい必要なんですよ。でもそのケアってほとんどやられていないので、そうなってくると、当然産後うつになってきちゃうんです。血が足りないからなっちゃうんですね。
ですので出産後にケアを始めてもなかなか間に合わないので、できれば赤ちゃんを授かる前からやっておけばもちろんいいんですけど、まずは授かった段階で、クコの実、レバー、かつおなどなど、赤い身(実)の血液をどんどん補ってあげるような食材を積極的に、習慣的にとっておくと、産後うつも防げますよ。
不妊治療を薬膳の観点から考えてみると
(すみ先生)別の事例ですが、43歳の女性で不妊治療をゆるやかにやっている方がいます。その方はすごく細くって、普段から疲れやすかったり、冷えが強かったりする体質なんです。いま彼女に、薬膳の食事を取入れてもらって三か月たつんですけど、やっぱり体温が上がってくるんですよね。それから、高温期と低温期がはっきり分かれてきたりとか、内膜が厚くなったりとか。食事で変化が現れてきました。
ついついどうしても、不妊治療となると、「卵が採れればいい」という考えになりがちですよね。でも薬膳的に考えると、卵を作ること自体も、子宮や卵巣の力なんですよ。だから、卵巣の力が衰えていると、そこにどんなに排卵誘発剤を打ったとしても、元気のない卵しか採れないですよね。
さらに、排卵誘発剤を打てば打つほど、本来だったら1個卵が採れるところを3個も4個も作らせるので、卵巣自体がものすごく疲れるんですよね。
ーー子宮や卵巣の力が衰えないようにしないといけないんですね…
(すみ先生)だから、よく多いのが、卵は採れたけれども空砲だ、というケース。それはいわゆる、血液不足なんですよね。そういった時には、その血液を補うような漢方薬や食材なんかをしっかりとってもらって、排卵誘発剤などを使わず、半年間くらい我慢して、そこで次の段階で排卵誘発剤をやってもらうと、今度はいい卵が採れるんですよ。だから前回は空胞だったけれども、しっかり「補血」して、それから排卵誘発剤を使ったら今度は質のいい卵が採れました、という話もよく聞きます。
私は決して西洋医学を否定する訳じゃないんですけど、どんどんホルモン剤を使うことによって、子宮力を落としているパターンがものすごく多いことについては危惧しています。人間の体は動物なので、ひとつ採るところをみっつ採ったら、潜在力を全部使い果たしちゃうんですよね。
他にもいろいろなホルモン剤の影響で、本来だったら35歳くらいの体なんだけれども、子宮としては40代くらいまでになってしまう場合もあったりしますしね。
ーー不妊治療というものは、女性にとって肉体的にも精神的にもかなりハードなんですね。
(すみ先生)そうなんです。特に、不妊治療のサイクルにはまってしまうと、「あなたいくつだと思っているの!」というプレッシャーが強すぎて、半年間体を整えるというような行動をなかなか取れなくなってしまいます。私の薬膳教室にきている不妊治療をしている生徒さん達は、結局何が楽かというと「サイクルから抜け出せるっていうのが楽だ」って言いますよ。
不妊治療ののサイクルにはまっちゃうとしんどいけど、そうじゃない考え方もあるということを知ること。そして、そういった方法でなくても妊娠できる可能性があるんだって思うと、頭と心のバランスがとれるんだと思うんですよね。