『トラさん~僕が猫になったワケ~』2月15日(金)公開 配給:ショウゲート ©板羽皆/集英社・2019「トラさん」製作委員会

北山さんは“アイドル脳”!?

――トラさんが関所の裁判長に向かって「人が生まれるところを見たことがあるか?」って言うシーンでは、本作の企画・プロデュースの明石直弓さんから「ここは娘の実優ちゃん(平澤宏々路)が産まれたときのことを思い出して、優しい表情で演じて欲しい」と言われたそうですね。

覚えています。あのときは確か、僕なりに優しさも表現したつもりだったんです。でも、それをもっと出して欲しいということだったし、僕は現場で柔軟な対処ができて、そっちに切り替えられる人になりたいという気持ちが強いので、“なるほど、この台本にはそういう意図があるんだな”と理解して。

僕も台本を読み込んで臨みましたけど、人や性別によって感じ方は違うので、“そういう表現の仕方もあるんだな”と思って、言われた表情になるよう努めましたね。

――明石さんは「自分の考えをゴリ押しするのではなく、監督やプロデューサーから言われたことを素直に受け入れてやってみる北山さんは“アイドル脳”なんじゃないか」と言われていました。

求められているものを100点とか120点で返すことが、僕がタレントとして目標にしていることではありますね。求められたのであればやるべきだし、そこに自分のプライドはいらない。

そういう意見もあるんだと柔軟に取り入れることが、タレントのすべてだと思うんですけどね。アイドルとして求められていることに応えることで、需要と供給が上手くいっているところももちろんあると思うけど、「こうやって欲しいんだ」って言われたら、僕はこれからも100点、120点で返す努力をしていくつもりです。

こういう家族がいいなって素直に思えた

――トラさんになる前の寿々男は猫の漫画を描いている漫画家なのに、猫のことがそんな好きじゃないという設定だったんですけど、北山さんはもともと猫はどれぐらい好きなんですか?

猫は幼稚園とか小学生のときに飼っていたんですよ。それで、すごく可愛くて大好きだったんですけど、一回、犬に浮気しまして(笑)。

でも、今回の現場で猫と触れ合ったり、撮った映像を観たときに、あっ、猫はやっぱり可愛いわってなって、もう1回、猫ブームが来ています(笑)。大好きですね。

『トラさん~僕が猫になったワケ~』2月15日(金)公開 配給:ショウゲート ©板羽皆/集英社・2019「トラさん」製作委員会

――猫の魅力はどんなところですか?

犬ほど“かまってちゃん”じゃないし、自分勝手だし、かまって欲しいときは「ニャーニャー」言ってきて、そういう自分勝手で気ままで、なかなか振り向いてくれないところが俺は好きかもしれないです(笑)。

――寿々男もダメダメなところがありながらも、憎めない愛すべきキャラクターで、ちょっと猫っぽかったですけど、北山さんは寿々男をどんな男ととらえていましたか?

すごく素直な男だなっていうのが、僕がいちばん最初に思ったことですね。

家族のことをちゃんと愛していて、それを言い続けているところが、僕が寿々男に対してリスペクトするところだったり、カッコいいなと思うところで。

奥さんの奈津子や娘の実優が人間としてはどうしようもない寿々男のことを好きなのも、彼が愛情を素直に表現していたからだろうし、僕もそんな寿々男が人としてすごく好きですね。

――北山さんがいま言われたように、本作の家族はすごく仲がよくて素敵ですけど、北山さんはこの3人家族をどんな風に見ていましたか?

そうですね~、いや、奈津子さんみたいな女性がいたら、そりゃ、結婚するわなって思いました(笑)。

だって、寿々男はタンスから奈津子さんのお金を盗むような本当にどうしようもない旦那ですよ。

なのに、文句を言うでもなく、娘の実優に愚痴をこぼすこでもなく、「もう!」って笑いながらやり過ごしているし、実優も寿々男のことを卑下しないから、いい嫁だな~、いい娘だな~、寿々男に対しては、男なんだからもっと頑張れ~!ってずっと思っていました。

それに僕は、この3人が見えない絆で繋がっているのを何となく感じて。映画の最初の方では、どちらかと言うと、幸せな家族のあり方とは反比例なことばかりが次々に起こっていくわけじゃないですか。

だけど、どこかで家族の絆があるのが僕には見えたんですよね。それがすごくよかったし、こういう家族がいいなって素直に思えたんです。

『トラさん~僕が猫になったワケ~』2月15日(金)公開 配給:ショウゲート ©板羽皆/集英社・2019「トラさん」製作委員会

北山さんが理想とする家族像

――そんな北山さんが理想とする家族像は?

俺の理想もこれぐらい甘やかしてくれる家族かな。甘やかされたいのよ、男は(笑)。たまに尻を叩いてくれる、ドンと構えている奥さんも理想です。

――子供との関係も、寿々男と実優ちゃんみたいに、喧嘩しながらも「なんだよ~」ってじゃれ合えるあんな感じがいいですか?

俺は、子供とは友だちみたいな関係でいいと思っているんですよね。

親だけど、友だちぐらいのフランクな距離感で。本当に尊敬できる人だったら、尊敬できるところを見せなくても勝手に周りが探すじゃないですか。

それと同じで、お父さんはこんなところがスゴいよね、とか、お父さんはこんなところが優しいよねって、自分の子供が気づいてくれるような存在ではいたいなと思います。理想はですよ(笑)。実際は分からないけど。

――今回、アイドルで独身の北山さんが父親の寿々男になり、娘役の宏々路ちゃんとお芝居をしてみて、いままで感じたことのない気持ちになるようなことはなかったですか?

よく分からないですけど、「父性」ってこういうことを言うのかな~って思いました。

奈津子さんを演じた多部(未華子)ちゃんも宏々路ちゃんも大好きだったし、撮影中は一緒にご飯も食べたし、3人でいるこの空気、俺、好きだな~って本当に思っていましたから。

そういうのは映像に出ると思っていたので、限られた時間でしたけど、寿々男としてふたりのことをちゃんと好きになれたのは自分の中でもすごく大きかった。

寿々男にちゃんとなれたなと思えた瞬間は、実はそういうところだったかもしれないですね。

もし自分が父親になったら…

――先ほど、「子供が自分のいいところに気づいてくれるような父親になるのが理想です」って言われましたが、もし自分が父親になったら、本当のところはどんな父親になりそうですか?

どうだろうな~? けっこう…男の子だったら、それこそ一緒によく遊ぶと思うな。

女の子だったら、どう接していいのか分からなくて、ちょっとタジタジするだろうし、彼氏を連れてこようものなら、「どこの馬の骨だ!」って怒鳴ったりするかもしれない(笑)。

でも、そういう父親はやっぱり娘に嫌われるじゃない?だから端っこの方で黙っているような気もするけど(笑)、男でも女でもやっぱり一緒に遊べる子がいいかな。

自分の趣味だったり、楽しいことや好きなことを一緒にやれたらいちばんいいんだけど、たぶん「イヤだ~、家でゲームをしたい」った言われるんだろうね(笑)。

『トラさん~僕が猫になったワケ~』2月15日(金)公開 配給:ショウゲート ©板羽皆/集英社・2019「トラさん」製作委員会