司会者が司会をしているのではなく、“人”が司会をしている
「SMAPのなかでいちばんおしゃべりができるようになる、ジャニーズのなかでいちばんおしゃべりができるようになる、芸能界でジャニーズなのにおしゃべりがいちばんできるようになる」。
そんな40歳を目指していたというのです。なぜ、それを目指したかというと、それは「誰もやっていないこと」だから。これまでのジャニーズの先輩たちの道を踏襲するのではなく、新たな姿を、若い時から意識をしていたのです。
そんな中居さんはどのような司会を理想としているのでしょうか。
「感情を安定させていたい。それは喜怒哀楽を出さないとか感情を押し殺すとかいう意味ではなくて、いつでも相手の言葉を引き出したり、人の気持ちを受け入れたりできるということ」
と、雑誌『AERA』で仕事の流儀を語った中居さん。その言葉を受け、太田さんは「タモリさんのスタイルを連想する」と言います。
中居さんとタモリさんは『笑っていいとも!』で共に過ごした関係。1994年に同番組入りした中居さんは、ちょうど20年間、司会者・タモリさんの側でその仕事っぷりを見ることができたのです。そんなタモリさんの司会スタイルは、「フラットな姿勢のMC」と、太田さんは分析。
「MCの仕事としてよく『仕切る』という表現が使われる。司会としてその場を進行することをそう言うわけだが、この表現にはその場をまとめるために積極的にリードするというニュアンスが感じられる。
ところがタモリは、そういったそぶりをまったくといっていいほど見せない。手抜きというわけではなく、出演者たちが作るその場の流れを感じ取り、それにうまく身を委ねる。その意味では、仕切らない」(同書より)
仕切らないことで、場を仕切るタモリさん。肩の力を抜いて、周りを見渡しながら司会をする人でした。
確かに中居さんの司会像は、タモリさんのそれに近いのかもしれません。中居さんの司会では、ガチガチに台本通りに進めている感じがなく、その場の空気に合わせて、自ら表現を変えているように映ります。
本当に楽しそうだったり、また、悲しそうだったりするのは、予定調和ではなく素直に場に合わせているからなのでしょう。司会者が司会をしているのではなく、はっきりと人が司会をしているように見えるのです。
積極的にリードしなくても場をおさめることができる、だからこそ中居さんは色んな番組で引っ張りだこなんですね。納得しました。
【書籍情報】『中居正広という生き方』太田省一著 青弓社