実践してみよう
以上のコツを踏まえて、実際にインタビューの受け答えをしてみましょう。
今回の受け答えはミカヅキモに頼みます。
―― ミカヅキモさんは単細胞生物としてご活躍なされているわけですが……
ミカヅキモ ああ、自分ではそういうことは全然意識しないんですけどね。水を漂ってたら周りがいつのまにかそう呼び始めたっていう。
―― 単細胞生物であることに不安などはないのでしょうか。
ミカヅキモ そりゃあ、まあ、顕微鏡で覗かれることがまったく気にならないかといえば嘘になりますけど(笑) 基本的にプレッシャーを感じたことはないですね。
―― それはなぜでしょうか。
ミカヅキモ 生まれつきかな? 気にならないんですよ、もともと。子供のころもね、みんなが有性生殖だ、無性生殖だって騒いでるじゃないですか。そういうのに興味が持てなくて。ずっとひとりで光合成のことを考えてました。
―― 子供の頃から光合成のことを!
ミカヅキモ それが当たり前だったんですね。「普通の藻らしさ」がよくわからなかった。変わった子供だったと思います(笑) 大人からしたら、扱いにくい藻だったんじゃないかなあ。あのときはいろいろ無茶もしたから、両親には今でも感謝してますね。
―― 無茶とは?
ミカヅキモ アメーバの連中とつるんだりね。当時はほんと落ちこぼれで、かろうじてできることが光合成だけだったから。
―― いつから単細胞生物を志すようになったのでしょうか。
ミカヅキモ うーん……具体的にこの時っていうのはないですよね。光合成は好きで毎日やってたけど、それだって他になにも出来ないからやってた趣味みたいなものですから。
当時はそれ(光合成)で食えるなんて思ってなかった。なんとか軌道に乗りだしたのもだいぶ後で、くすぶってた時期も長かった。だからもしタイムマシンがあったら過去に行って、昔の僕に言いたいですよね。「おい、お前、光合成でなんとかやってけてるぞ!」って(笑)
―― (笑) 「なんとか」じゃなくて、人気者じゃないですか。
ミカヅキモ いやいや、それは結果論ですから。たしかに今の僕は理科用の教材として使用してもらえてはいるけれど、将来的にはどうなるかわからないわけで。世間の需要と、僕の光合成の供給が運良く合わさっただけともいえる。
―― 随分とシビアに考えているんですね。意外です。
ミカヅキモ 僕は単細胞生物なので、常にセルフプロデュースということを考えています。今は当たり前になっちゃったけど、この細長い形状を受け入れてくれる場なんて、昔はなかった。当時はゾウリムシとかクマムシとか、そういうシーンが主流でしたから。
だから当時は「居場所が無いなら作ろう」と思っていろいろやりました。プレパラートの上で生きていくためにはそういうことをしないといけない。
―― そのモチベーションはどこから来るのでしょうか。
ミカヅキモ 誰かのためにっていうのではないかもしれません。とにかく自分には光合成しかない。光合成できなければ死ぬって思ってましたから。必死でやってたらそうなったってだけですね。
―― 単細胞生物として生きていくことで困難はなかったのでしょうか。
ミカヅキモ 以前は、顕微鏡の視線と自意識との「ズレ」みたいなことで悩んでいました。外から求められる光合成と、自分が本当にやりたい光合成が違う気がして……。
光合成がまったくできなくなって、べん毛を抜くといった自傷行為に走ったりもしました。それでいろいろ限界になって、夜中に泣きながら「自分はこのままでいいのかな?」ってクロレラに相談したんです。そしたら「いらないなら俺に葉緑体くれよ」って(笑)
―― クロレラさんらしいですね。
ミカヅキモ でも、その一言でずいぶん救われましたね。なんというのかな、ズレを許容する余裕ができた。ちょっと抽象的な話になっちゃうんですけど……たとえるなら、大きな流れがあって、自分はその上にいると。
―― はい。
ミカヅキモ 今まではそれに単に流されているって感じだったのが、世界ごと、自分を動かしているというふうに思えた。そうすると、全身がフッと楽になって。いままでで足かせになっていた「ミカヅキモ」という像が、大きな流れの中で……
―― 合わさっていった。
ミカヅキモ そう。合わさっていった。これが本当に微生物でいるということなんだ。自分は単細胞生物でいいんだと思えたんです。そこでやっと僕なりの回答を提示することが出来ました。
―― それでは最後に読者の皆さんにメッセージを。
ミカヅキモ ずっと好きなことばかりやってきました。今回の光合成はその集大成のようなものになっていると思います。これが微生物と理科の架け橋になれたら嬉しいですね。
―― ありがとうございました。
参考になったでしょうか?
こんなことに何の意味があるのかはわかりませんが、参考にしてみてくださいね。