“快適母乳生活”を送るための情報や、知識が純粋に不足しているんですね。』
――ネットで調べてみても「トラブルが起きたら大変よォ、痛いわよォ」という体験談ばかり目について、「自分の身体の声に耳を傾けて」なんて捉えどころのないアドバイスに戸惑ったりすることもあります。
『そういうママが、大半だと思います。
“快適母乳生活”を送るために、トラブルを回避する方法も、トラブルが起きてしまった時に対処する方法も、またトラブルの後にスムーズで楽ちんなおっぱいライフを続けてゆく方法もあるのです。ただ、そういった理解が広がっていないだけ。
残念ながら「大変、大変」という思い込みと、誤った情報があふれているんですね。
ひとつ、例を挙げましょうか。赤ちゃんが生後6~7カ月を過ぎたあたりから「おっぱいの出が悪くなったから」と母乳をやめてしまうママがたくさんいます。
追い打ちをかけるように、復職前に保育園から「断乳した方が預けられるお子さんのためです」と言われたり、1歳児検診で「そろそろ飲ませないほうがいい」と言われたりして、「これまでトラブル続きだったし、出も悪くなっちゃったし、子どもにいいこともないんじゃ断乳しよう」となるワケですね。
でもね、おっぱいの出が悪くなったように感じるのは、赤ちゃんが必要な時に必要な量だけ母乳を作ることができる“いいおっぱい”になったから、だったりするのです。
「母乳の出がいい」イコール「おっぱいが張ること」だと思っていると「最近おっぱいが張らないから出が悪いんだわ、もう止め時なのね」と勘違いしてしまう。
せっかくトラブルを乗り越えて、ママにとっても子どもにとっても“いいおっぱい”が手に入ったのに、それを活用しないで終わってしまうのは、あまりにももったいない。
まさにこれから、ママもお子さんも、いい思いがいっぱいできるのに!
復職後も母乳育児を続けることのメリットはまた別の機会にお話ししますけれども、仕事復帰の前に断乳する必要もなく“快適母乳生活”を続けることだってできるんですよ。
でも、その前におっぱいをやめてしまうと「母乳育児は辛かった」と、そんなイメージだけが残ってしまう。本当に、もったいないなーと思いますね。』
――私も、1歳児検診でお医者さんや歯医者さんから「もうやめたら? 」と言われたひとりです。
『母子手帳から1歳での「断乳」についての記載が消えてずいぶん経ちますし、WHO(世界保健機関)も、2歳以降までの授乳を推奨しているんですけどね……。
実は、そもそもドクターですら「母乳育児」について習う機会がありません。たとえ産科であっても、母乳についての学科そのものがないそうです。助産師も母乳については習うのですが、生活との関わりについては教えてもらっていない。
これを「母子を見ないで“乳房”(ニュウボウ)しか見ていない」なんて揶揄する人もいますが、どのようにしたら快適に母乳ライフが送れるのか結局のところ、ドクターも助産師も学んでいないんですね。
とはいえ、これもある意味で仕方のないことで、昔の日本では周りにたくさん母乳育児のお手本がいて、おっぱいを出して授乳するのもOKでした。つまり医者や助産師が勉強して教えなければならないようなことではありませんでしたから。
それが結果として誤った情報やフォローばかりになってしまって、現代のママたちを苦しめている。ママは何にも、ちっとも悪くないのに。
誰も教えてくれないうえに間違った情報が氾濫していて、問題が起きてもきちんと助けてすらもらえないんだから、どうしようもないことなのに自分を責めちゃったりね。
母乳で育てたい! というママは「どんな風に母乳育児をスタートしたらいいのか」、「トラブルが起こったらどのように対処したらいいのか」、また「どうやったら気持ちよく続けてゆけるのか」、母乳育児を応援している助産師さんや医療機関の母乳外来などで、正確な情報を手に入れるようにしてみてください。
きっと“快適母乳生活”が送れるようになりますよ! 』