母乳育児、見落としがちなもう1つの大きなメリット

『そして母乳育児にはもうひとつ、大きなメリットがあります。

母乳育児は、災害に強いんです。もっといえば「防災」にもなり得るんですよ。』


――母乳育児が、災害に強くて「防災」に? それは備え置きの防災袋の中に、ミルクのストックが要らないからということでしょうか。

『それもありますが、それだけではありません。

即避難できて授乳できる、常に非常食を携帯していることになりますから、この安心感は非常時のママの心をも、少なからず「楽」にしてくれます。

また新潟県中越地震(2004年)から東日本大震災(2011年)、さらには先日の熊本地震での経験などから言えることですが、被災地支援の全体像を考えた時に、母乳育児の家庭が増えればその分、限りある粉ミルクや水といった物資を、必要な被災者に回すことができる。支援を必要とする被災者を“選択”して、貴重な支援物資を“集中”して届けられる、つまり「選択と集中」ですね。

自分の考えでミルクを選ぶママも、またミルクを使わざるを得ないママもいます。繰り返しになりますが、それはねぎらわれこそすれ、決して非難されることではありません。
そしてそんなママと赤ちゃんのために優先的に物資を届けるためには、常日頃から、母乳育児が可能なママについては無理なく母乳育児を希望して進められるよう、自治体や医療機関がバックアップしておくことが、平時の備えとして大切になってくると思うのです。』


――モーハウスでは、被災した母乳育児ママへ「授乳服」等を贈っていらっしゃるそうですね。

ひとつひとつ気持ちを込めて授乳アイテム&メッセージを梱包中。支援物資は熊本県助産師会等を通じて現地のママたちの手に渡ります

『避難所は、極限の“パブリック”(公共の場)です。

母乳であれば「即避難できて授乳できる」のはママにとって大きな安心材料ですが、では極限の“パブリック”である避難所の、どこで授乳をしたらいいのか。赤ちゃんが泣くたびに、外へ出て授乳をするのか。無事避難した後、こんな問題に直面することになります。

赤ちゃんが夜中におっぱいを欲しがって泣くので一晩中、避難所の外で抱っこしていたという話も聞きました。

前回の「授乳服・ケープどっち? 光畑由佳さんに聞いた“赤ちゃんを泣かせない”コツ【動画あり】」でもお話ししましたが、“赤ちゃんを泣かせないコツ”は、とにもかくにも「すぐ授乳」することなんですね。「すぐ授乳」できれば「泣いたらどうしよう」という心配も、それほどしなくて済む。

避難所でも「授乳服」というソリューションがあれば、服1枚で解決できるのです。

普段から授乳服を身に着けて、サッと逃げてサッと授乳、というのが一番だとは思いますが、母乳育児をしているご家庭では防災グッズの中に、ぜひ「授乳服」を加えてもらいたいですね。』


――たしかに「すぐ授乳」できれば、赤ちゃんが泣くこともぐっと少なくなりますし、授乳服を着ていれば胸が見えてしまう心配も、また周りの方に余計な気遣いをさせることもなくなります。追い詰められた状況で、心理的負担はできるだけ減らしたいですね。

『授乳はね、命にすぐには関わらないことだし、まして授乳中のママはマイノリティーでしょう? 被災地では、自ら声を上げにくいと思うんです。だからこそ、私たちの方から声を上げたい。

極限の“パブリック”の中で、如何に女性のプライバシーを守るのか。そして悲しいことですけれども、災害後というのは、性犯罪も増えるんですね。夜中に女性が外へ出たり動き回ったりというのは、リスクが高い。そういった危険から女性を守るためにも、積極的な支援を続けてゆきたいと思っています。』

《熊本地震》支援チャリティーモーハウス手ぬぐいは売上の一部が被災者支援のための基金になるのだとか。
支援物資に同封した「災害のときの母乳育児」はモーハウス平成28年熊本地震支援ページからもダウンロードできます